張衡 (科学者)

張衡：後漢を代表する多才な天才

張衡（ちょうこう、78年～139年）は、後漢時代の傑出した人物です。詩人、学者、そして発明家として、多岐にわたる才能を発揮しました。現代においても、彼の業績は高く評価されており、中国科学技術史における重要な位置を占めています。

humble beginnings and early life

南陽郡西鄂県（現在の河南省南陽市臥竜区）の没落した官僚家庭に生まれた張衡は、幼い頃に父を亡くします。清廉潔白だった祖父の影響もあり、家庭環境は決して恵まれたものではありませんでした。しかし、彼は幼い頃から読書を愛し、司馬相如や揚雄といった著名な文人の作品を熱心に読み込みました。10歳頃には自作の詩が人々の称賛を得るほど、才能を開花させ始めます。青年期には洛陽と長安に遊学し、5～6年間を費やし勉学に励みました。多くの著名人からの誘いもあったにもかかわらず、彼は良き師や友人との交流を重視し、特に天文・数学に造詣の深い崔瑗からは大きな影響を受けたとされています。

官歴と研究活動

永元14年（102年）には南陽郡守の主簿に任命され、官職に就きます。永初元年（107年）には『東京賦』と『西京賦』（合わせて『二京賦』）を著し、文才も高く評価されました。その後、京官の郎中を経て、元初3年（116年）には暦法機構の最高官職である太史令に就任します。太史令在任中は、天文学の研究に没頭しました。建光2年（122年）には公車馬令に転任しますが、永建3年（128年）から永和元年（136年）にかけて再び太史令を務めます。

張衡は剛直な性格から、権力者と対立することもありました。永和3年（138年）には尚書に任命されますが、翌永和4年（139年）、62歳で亡くなりました。

科学技術への貢献

張衡は天文学者、数学者、そして発明家としても類まれな才能を発揮しました。彼の発明品には、世界初とされる水力渾天儀（117年）、水時計、風向計、そして地動儀（132年）などがあります。特に地動儀は、当時としては驚異的な500キロメートル離れた地震を感知できたと伝えられています。地震発生の報告が数日後に届いた際に、地動儀の計測の正確さが証明され、その精度の高さに人々は驚きを隠せませんでした。

天文学においては、『霊憲』『霊憲図』『渾天儀図注』などの著作を著し、約2500個の星々を記録、太陽と月の関係についても研究しました。『霊憲』では、月を球形と定義し、その輝きは太陽光の反射によるものであると論じています。さらに、月食の原理についても理解しており、月の直径の計算も行っていたとされています。また、太陽年の長さを365日と1/4と算出するなど、天文学分野にも多大な貢献をしました。これらの研究は、2世紀における後漢での天災多発という時代背景と無関係ではありません。

数学分野では『算網論』を著し、円周率をπ＝3.16強と算出しました。この精度は、インド・アラビアに比べて400年も早い成果であり、その先駆的な業績は高く評価されています。

文人としての側面

張衡は、優れた文人としても知られています。彼の代表作である『二京賦』は、漢代の賦を代表する作品として、現在も高く評価されています。『帰田賦』『南都賦』『思玄賦』なども『文選』に収録されており、その文才は後世に大きな影響を与えました。晩年には七言詩の先駆けとされる『四愁詩』を著し、多様な文芸作品を残しました。画家としても才能があり、東漢六大画家の一人にも数えられています。

張衡の遺産

張衡の業績は、現代においても高く評価されています。[小惑星]や、電磁環境モニター試験衛星「張衡1号」などに彼の名前が冠されています。また、隕石から発見された鉱物「ツァンヘン鉱」も、彼にちなんで名付けられました。彼の生涯と業績は、後世の人々に多大な影響を与え続け、中国文化に不滅の足跡を残しています。現在も、彼の業績を称える記念館が南陽市に存在しています。

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