南陽郡

南陽郡（なんようぐん）

南陽郡は、古代中国に存在した郡であり、その領域は現在の河南省南陽市、平頂山市、そして湖北省の随州市、襄陽市にまたがっていました。秦代から唐代にかけて設置され、中国の歴史において重要な役割を果たしました。

歴史

南陽郡の起源は、紀元前272年（秦の昭襄王35年）に遡ります。秦の武将である白起が楚を攻撃し、宛を占領した際に、南陽郡が設置されました。これにより、秦は中原における支配を確立し、後の中国統一へとつながる足がかりとしました。

前漢時代

前漢時代には、南陽郡は荊州に属し、以下の36県を管轄していました。

宛、犨、杜衍、酇、育陽、博山、涅陽、陰、堵陽、雉、山都、蔡陽、新野、筑陽、棘陽、武当、舞陰、西鄂、穣、酈、安衆、冠軍、比陽、平氏、随、葉、鄧、朝陽、魯陽、舂陵、新都、湖陽、紅陽、楽成、博望、復陽

『漢書』によれば、前漢末期の南陽郡には35万9316戸、人口194万2051人が居住しており、当時の中国においても大規模な郡であったことがわかります。

後漢時代

王莽の時代には一時的に前隊郡と改称されましたが、後漢の成立とともに南陽郡の名称に戻されました。後漢時代には、以下の37県を管轄していました。

宛、冠軍、葉、新野、新都、章陵、西鄂、雉、魯陽、犨、堵陽、博望、舞陰、比陽、復陽、平氏、棘陽、湖陽、随、育陽、涅陽、陰、酇、鄧、山都、酈、穣、朝陽、蔡陽、安衆、筑陽、武当、順陽、成都、襄郷、南郷、丹水、析

後漢時代も、南陽郡は引き続き重要な地域であり、多くの人口を抱えていました。

魏晋時代

魏の時代には、南陽郡の一部が義陽郡として分割されました。晋の時代には、南陽郡は南陽国となり、以下の14県を管轄しました。

宛、西鄂、雉、魯陽、犨、淯陽、博望、堵陽、葉、舞陰、比陽、涅陽、冠軍、酈

恵帝の時代には、さらに新野郡が分割されました。これにより、南陽郡の領域は縮小しましたが、依然として地域の中核としての役割を担っていました。

隋唐時代

583年（開皇3年）、隋が郡制を廃止した際、南陽郡は鄧州と改称されました。しかし、607年（大業3年）に再び州が廃止され郡が置かれると、鄧州は南陽郡に再び改称されました。この時代には、以下の8県を管轄していました。

穣、新野、南陽、課陽、臨湍、冠軍、菊潭、順陽

619年（武徳2年）、南陽郡は唐の時代に鄧州となりました。742年（天宝元年）には再び南陽郡と改称されましたが、758年（乾元元年）に鄧州に戻され、南陽郡の名称は歴史から姿を消しました。

南陽郡は、その長い歴史の中で、行政区画の変更や名称の変遷を経験しながらも、常に中国の重要な地域であり続けました。その領域は、現在の河南省と湖北省にまたがり、豊かな自然と文化を育んできました。

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