張裕妃

裕妃張氏（ゆうひ ちょうし）は、明朝の第16代皇帝、天啓帝の妃嬪として知られています。彼女は万暦34年7月19日（西暦1606年8月22日）に、現在の河北省涿州市で、庶民の張世登と段氏の娘として生を受けました。

幼少期を一般の家庭で過ごした彼女は、万暦40年（1612年）に後宮に入り、当初は侍女として仕えました。天啓帝が即位すると、彼女は皇帝の目に留まり、寵愛を受けるようになりました。天啓3年（1623年）5月18日には、妊娠が近い兆候を見せたため、正式に妃の位を授けられました。しかし、予定されていた出産日を大幅に過ぎても出産に至らなかったため、天啓帝の不興を買ってしまいます。

さらに、裕妃張氏は、その言動から、当時の権力者であった宦官の魏忠賢や、天啓帝の乳母である客氏らの反感を招きました。その結果、同年8月8日には位を剥奪され、別宮に幽閉されることになりました。幽閉された彼女は、食事も与えられず、同年8月22日（西暦9月16日）に、悲劇的な死を迎えました。

彼女の死後、崇禎4年（1631年）に、天啓帝の弟である崇禎帝によって「悼順」という諡号が贈られ、妃としての礼をもって金山に埋葬されました。これにより、彼女は亡くなった後も、一応の敬意を払われた形となります。

裕妃張氏の生涯は、明朝末期の混乱期における後宮の権力闘争と、皇帝の気まぐれによって翻弄された女性の悲劇を象徴する出来事として、歴史に刻まれています。

参考資料

『明熹宗実録』
『明史』
『酌中志』
『熹廟悼順裕妃壙志』

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