張道藩

張道藩（ちょう どうはん）の生涯

張道藩は、中華民国（台湾）の政治家、教育者であり、中国国民党の有力な派閥であるCC派の幹部として知られています。彼は、反共産主義と抗日を掲げた文芸政策を積極的に推進しました。旧名は道隆、字は衛之。

留学時代と初期の活動

1914年、盤県高等小学を卒業後、小学校教員を務めました。1916年には中華革命党に加入しましたが、直後に天津へ移ったため党員証を受け取ることができませんでした。天津では南開学校（後の南開大学）に入学し、英語と日本語を独学で学びました。1919年11月、勤工倹学生としてフランスへ出発する直前に、上海で孫文と対面しています。

翌年1月、ロンドンに到着。当初の目的地であるフランスでの就労が難しいと判断し、イギリスに留まることを決めました。事前学習を経て、1921年9月にはロンドン大学スレード美術学校に初の中国人学生として入学しました。1923年には、ロンドンで知り合った邵元沖の勧めで中国国民党に入党。1924年に美術学部を卒業し、その後パリのエコール・デ・ボザールに入学、芸術の研鑽を続けました。この時期には、徐悲鴻など多くの芸術家と交流を深めています。

CC派への加入と台頭

1926年5月に帰国した張道藩は、同年秋に広東省政府農工庁長の劉紀文の秘書となりました。その後、国民党中央組織部部長代理の陳果夫に見出され、彼の指示で貴州省党部の建設に尽力しました。しかし、貴州省政府主席の周西成は国民党中央の勢力拡大を警戒し、張道藩を「赤化の嫌疑」で逮捕・監禁しました。地元の有力者の尽力で10月に釈放されたものの、貴州での活動は不可能となり、上海へ逃れました。

この事件がきっかけで、張道藩は陳果夫・陳立夫兄弟から重用され、CC派の一員として頭角を現しました。1928年3月には中央組織部秘書に任じられ、10月には南京市政府秘書長に就任。1929年3月には国民党第3回全国代表大会で中央執行委員候補に選出されました。1930年には青島大学教務長、同年12月には浙江省政府教育庁長、翌年には党中央組織部副部長を歴任しました。

満州事変後、蔣介石の「攘外安内」政策を支持したことで、国内学生の反発を買い、自宅を破壊されるという憂き目に遭いました。これを機に、一時すべての役職を辞任し、蔣介石の個人秘書に転身しました。1932年5月には、南京に設立された中国文芸社の理事に就任。その後、中華全国美術会理事長、南京戯劇学校の創設など、反共宣伝のための文化活動を積極的に展開しました。

同年11月には国民政府交通部常務次長に就任。1935年には党第5回全国代表大会で中央執行委員に選出され、翌年には内政部次長に転任しました。

日中戦争下の活動

日中戦争勃発後、張道藩は前線の将兵を激励するため、劇団や合唱団の派遣を積極的に行いました。1938年には、陳立夫が教育部部長と党中央社会部長を兼任すると、張道藩が教育部常務次長と党中央社会部次長に就任しました。さらに、中央宣伝部文化運動委員会主任委員にも任命され、抗日宣伝に加え、郭沫若率いる文化工作委員会への対抗も担当しました。翌年9月には、陳兄弟の推薦により中央政治学校の教育長となり、校長の蔣介石を補佐しました。

1942年、蔣介石・宋美齢夫妻のインド訪問に随行し、ジャワハルラール・ネルーとの会談では書記を務めました。帰国後の12月には党中央宣伝部長に昇進。翌年9月には党海外部部長に異動しました。1944年には、対日戦の最前線となった貴州省へ赴き、戦災民の救済活動に取り組みました。1945年4月には、侍従室第2処副主任に任命され、陳布雷を補佐し機密事項を主管しました。

晩年と台湾での活動

戦後の1946年、張道藩は中央電影企業公司を設立し、理事長に就任しました。1948年3月には、党中央訓練団が設立した民間芸術訓練班の指導委員会主任に任命されました。同年冬には立法院立法委員となりました。

国共内戦後、張道藩は台湾へ移り、引き続き反共活動と文化活動を続けました。『中華日報』と中国広播公司の董事長を務め、中国文芸教会を創設して常務理事となりました。政治的には、1950年に中央改造委員会委員に任命され、国民党の改革を推進しました。1952年3月には立法院長に就任し、1961年まで務めました。1953年以降は、党中央常務委員を3期連続で務めました。1956年4月には日本を訪問し、靖国神社を参拝しています。

1968年6月12日、台北市で病没。享年72歳でした。

張道藩の生涯は、激動の時代における政治と文化の複雑な関係を映し出しています。彼の活動は、中国の近代史を理解する上で重要な役割を果たしています。

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