弾道ミサイル早期警戒システム

弾道ミサイル早期警戒システム（BMEWS）とは

弾道ミサイル早期警戒システム（Ballistic Missile Early Warning System, BMEWS）は、弾道ミサイルによる攻撃を早期に探知し、警戒するために構築されたレーダー網です。冷戦時代、ソビエト連邦からの大陸間[[弾道ミサイル]]（ICBM）による攻撃の脅威に対抗するため、主にアメリカ合衆国、カナダ、そしてイギリスを防御する目的で建設されました。

システムの概要

BMEWSは1959年から本格的な構築が開始されました。ソ連からのICBMは北極圏を越えて飛来する可能性が高かったため、その経路をカバーするように、北極圏に近い3か所にレーダーサイトが設置されました。これらのサイトは以下の通りです。

サイトI：チューレ空軍基地（グリーンランド）
1960年からアメリカ空軍によって運用開始。
サイトII：クリアー空軍基地（アラスカ州）
1961年からアメリカ空軍が運用を開始し、2001年にPAVE PAWSシステムに統合。
サイトIII：フィリングデール空軍基地（イギリス）
1962年からイギリス空軍が運用を開始。

これらのレーダーサイトで得られた情報は、アメリカ合衆国コロラド州コロラドスプリングスにある北アメリカ航空宇宙防衛司令部（NORAD）に送信され、そこで分析・評価が行われました。

システムの開発は1958年までにトリニダード島で行われ、フロリダ半島から試験発射された弾道ミサイルを用いてレーダーのテストが実施されました。

初期システムの特徴

初期のBMEWSには、AN/FPS-50およびAN/FPS-49という2種類のレーダーが用いられました。

AN/FPS-50:
高さ50メートル、幅122メートルにも及ぶ巨大な網状の固定式レーダーで、Lバンドの周波数帯域を使用。
通常、5,500キロメートルの探知範囲を持ちますが、精度は高くなく、主にミサイルの方向を探知するために用いられました。
1基で40度の範囲をカバーできました。
AN/FPS-49:
直径26メートルの回転式レーダーで、ミサイルの追跡に用いられました。
1秒間に32度で回転し、レーダードームの高さは約43メートルに達しました。

これらのレーダーの信号処理には、IBM 7094メインフレームコンピュータが使用されました。BMEWSが完全に稼働を開始したのは1960年代初期のことです。

各基地のレーダー構成は以下の通りでした。

チューレ空軍基地: AN/FPS-50を4基（計160度をカバー）、AN/FPS-49を1基設置。
フィリングデール空軍基地: AN/FPS-49を3基設置。
クリアー空軍基地: AN/FPS-50を3基（計120度をカバー）、後にAN/FPS-49を改良したAN/FPS-92を1基設置。

誤警報事件

1960年には、BMEWSが誤警報を発するという事件が発生しました。これは、レーダーの出力が非常に強力であったため、水平線上に現れた月にレーダー波が反射し、それをミサイルと誤認して警報を発したものでした。担当者はすぐに誤警報であると判断したため、実戦部隊の出動は行われませんでした。この事件の後、月からの反射は無視するようにシステムが調整されました。

その後の更新

BMEWSのレーダーシステムは、その後、より高性能なフェーズドアレイ[[レーダー]]に更新されました。

チューレ空軍基地: 1987年にAN/FPS-120フェーズドアレイ[[レーダー]]（2面で240度をカバー）に更新。
フィリングデール空軍基地: 1992年にAN/FPS-126フェーズドアレイ[[レーダー]]（3面で360度をカバー）に更新。
クリアー空軍基地: 2001年にAN/FPS-115フェーズドアレイ[[レーダー]]に更新され、BMEWSからPAVE PAWSシステムに組み込まれました。

まとめ

弾道ミサイル早期警戒システム（BMEWS）は、冷戦時代における戦略的な防衛システムとして重要な役割を果たしました。初期の巨大な固定式レーダーから、より高性能なフェーズドアレイ[[レーダー]]への更新を経て、現在もその一部はミサイル防衛に貢献しています。

関連事項

遠距離早期警戒線 （DEWライン）
早期警戒衛星
部分軌道爆撃システム
ミサイル防衛

外部リンク

fas.org BMEWS

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