形容動詞

形容動詞とは何か？

形容動詞は、日本語の品詞の一つです。橋本進吉の品詞分類に端を発し、現代の学校文法でも用いられています。平安時代に、形容詞では表現しきれない意味を持つ名詞に「なり」や「たり」が付加されることで成立しました。「なり」は「にあり」の略でダ型活用、「たり」は「とあり」の略でタルト型活用を示します。しかし、形容動詞を独立した品詞として扱うか否かについては、古くから議論が続いています。

形容詞、名詞との違い

形容詞との主な違いは、「～である」を付けることができる点です。「大きいである」は不自然ですが、「不謹慎である」は自然です。ただし、「大きいである」が不自然なのは、慣例的な側面も強く、文法的に完全に不可能というわけではありません。「大きいのだ」「大きいのである」などは自然な表現です。

名詞との違いは、活用がある点です。名詞は活用しませんが、形容動詞は「な」「に」などの活用をします。しかし、名詞に助動詞「だ」が付く形と形容動詞を区別するのは容易ではありません。形容動詞は程度を表す副詞で修飾できる点（例：「かなり無慈悲」）が、名詞と異なる重要な特徴です。また、「タルト型形容詞」を除く形容動詞は、「な」「に」を伴う「属性名詞」として扱われることもあります。

諸説と文法論

形容動詞を単一の品詞として扱うべきか否かについては、日本語学者間で意見が分かれています。

橋本文法、松下文法、学校文法: 形容動詞を独立した品詞として認めています。
時枝文法: 形容動詞を否定し、体言に助動詞が付いたものと解釈しています。
* 新村出、鈴木重幸・工藤真由美: 形容動詞を否定し、名詞の一種とみなしています。

形容動詞を形容詞とみなす立場では、「な形容詞」として説明されることが多く、日本語教育においてもこの扱いが一般的です。一方、名詞とみなす立場では、名詞に助動詞「だ」が付いたものと解釈します。この場合、「形容詞性名詞」という用語が使われることもあります。形容動詞と名詞は境界が曖昧であり、「清廉」「波乱万丈」など、名詞としても形容動詞としても使われる語が存在します。

名称に関する議論

「形容動詞」という名称自体にも異論があります。動詞よりも形容詞的な性質が強く、語幹は名詞として取り出せることから、「形容動詞」という名称は適切ではないという意見があります。海外の日本語研究では"nominal adjective"（名詞的形容詞）が使われることが多く、「名容詞」という用語も提案されています。「～な」という連体形は、「～なる」が変化したものと考えられています。

日本語教育における扱い

[日本語教育]]では、形容動詞を「な形容詞]」、[形容詞を「い形容詞]」と分類して教えることが多いです。「na-noun」「qualitative noun」「adjectival noun」と呼ばれることもあります。形容[[動詞をadjectival nounと呼ぶ場合は、形容詞をadjectival verbと対比させることが多いですが、混同に注意が必要です。日本語処理分野では、「ナニ名詞」と「タルト名詞」に分類して辞書に登録するという方法もあります。

活用の種類

形容動詞の活用には、「だ」型活用（ダ型活用、ニナ型活用）と「タルト」型活用があります。「だ」型活用は断定の助動詞「だ」と類似しており、連体形は名詞を修飾できます。「タルト」型活用は文語の「たり」活用に由来し、活用は比較的退化しています。「営営と」「堂堂と」などが例として挙げられます。さらに、文語の「なり」活用、「たり」活用も存在します。

特殊な活用

「同じだ」のように、二種類の連体形を持つものや、「大きな」のように連体形のみ存在するものなど、特殊な活用をする形容動詞もあります。「大きな」は連体詞と分類されることもありますが、元々は「大きだ」という形容動詞であった可能性も指摘されています。これらの分類や解釈は、文法論によって異なっている点に留意する必要があります。

まとめ

形容動詞は、その定義や品詞としての扱いについて、様々な解釈や議論がある複雑な品詞です。この解説が、形容動詞の理解の一助となれば幸いです。

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