影の内閣

影の内閣とは

影の内閣（Shadow Cabinet）とは、議院内閣制を採用している国において、主に野党第一党が設置する政策立案機関です。政府与党の政策をチェックし、代替案を提示することで、政権交代に備える役割を担います。

影の内閣の概説

影の内閣は、ウェストミンスター・システムを採用している国で多く見られます。特に、野党第一党が中心となり、所属する国会議員を中心に構成されます。行政権は持たないものの、政府・与党内閣のカウンターパートとして、政府の政策や事業を監視し、必要に応じて代替政策を提示します。

イギリスにおける影の内閣

イギリスでは、野党第一党の党首が影の首相となり、党所属の国会議員から影の閣僚を任命し、影の内閣を組織します。これは、政府・与党の内閣に対抗する組織として機能し、健全な議会政治における政権交代と、野党の政策立案能力の重要性に基づいています。

影の内閣は公職とみなされ、運営には予算が計上されます。また、議会内には影の内閣専用の執務室が提供されています。定期的に会議を開き、政府の政策に対する批判や対案の提出を行います。

下院本会議場では、内閣が与党席の前列に着席するのに対し、影の内閣は野党席の前列に着席し、お互いに向き合う形となります。クエスチョンタイムでは、答弁閣僚の正面に影の閣僚が着席し、影の閣僚には特別な質問枠が与えられます。

総選挙で野党が勝利した場合、影の内閣のメンバーはそのまま新内閣の大臣に就任することが一般的です。

日本における影の内閣

日本では、1990年代以降に野党第一党が影の内閣を模した政策立案機関を組織するようになりました。

主な例として、以下のようなものがあります。

シャドーキャビネット: 日本社会党が1991年9月～1993年8月に組織。
明日の内閣: 新進党が1994年12月～1997年12月に組織。
次の内閣: 民主党が1999年10月～2009年9月と2012年12月～2016年3月に組織。
シャドウ・キャビネット: 自由民主党が2010年9月～2012年12月に組織。
次の内閣: 民進党が2016年3月～2018年5月に組織。
次の内閣: 立憲民主党が2022年8月～現在、組織。

しかし、日本では閣僚の在任期間が短く、総選挙後も首相が交代しない場合でも閣僚が大幅に入れ替わる慣行があるため、影の内閣の名簿がそのまま新内閣の閣僚名簿に反映されることは少ない傾向にあります。

また、政権参加前の社会党や、2009年に下野してから政権復帰するまでの自民党は、連立による政権獲得を目指していましたが、影の内閣に共闘政党のメンバーを含めることはありませんでした。

民進党はその後、希望の党と旧立憲民主党に分裂し、2020年に新立憲民主党が結党されました。2021年9月には、福山哲郎幹事長が衆院選に向けて閣僚候補を公表する可能性を示唆しましたが、実際には発表は行われませんでした。しかし、2022年8月26日、立憲民主党の泉健太代表が「次の内閣」の設置を表明しました。

各国の影の内閣

影の内閣は、イギリス以外にもオーストラリアなど、ウェストミンスター・システムを採用している国々で同様の制度が見られます。

脚注

[オーストラリア]] - [w:Shadow cabinet of Australia

関連項目

二大政党制
* 党首討論

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