影絵アニメーション

影絵アニメーションとは

影絵アニメーションは、キャラクターを黒い影絵として表現するアニメーション技法です。シルエットアニメーションとも呼ばれます。その制作方法は様々ですが、一般的には、関節が動くように繋げた切り紙に後ろから光を当て、それを撮影してアニメーションを作成します。影絵芝居の影響を受けていますが、技術的には大きく異なります。

歴史

ヨーロッパでは、影絵芝居（オンブル・シノワーズ）やシルエット画から着想を得て、影絵アニメーションが同時多発的に生まれたと考えられています。現存する最古の作品としては、1910年にイギリスの映画監督チャールズ・アームストロングが制作した『The Clown and His Donkey』が挙げられます。この作品は、背景を黒く、キャラクターを白い影絵で表現しています。

一方、ドイツではロッテ・ライニガーが1919年に処女作『Das Ornament des verliebten Herzens』を制作しました。彼女の作品は、キャラクターを黒い影絵で表現しており、現在の影絵アニメーションのスタイルを確立したと言えます。1926年に制作されたライニガーの『アクメッド王子の冒険』は、世界初の長編影絵アニメーションであり、世界中で影絵アニメーションへの関心を高めました。

日本では、1928年に鈴木俊夫が『四十人の盗賊』を制作しましたが、それ以前にも1924年に『蟹満寺縁起』（監督：奥田秀彦、内田吐夢、木村白山）という影絵アニメーションが存在しています。

今日では、純粋な影絵アニメーション映画は稀であり、専門のアニメーターも少なくなっています。しかし、デジタル技術を用いた影絵アニメーションは、『サウスパーク』や『Mona the Vampire』などのテレビアニメシリーズ、ゲームの『ドンキーコング リターンズ』などで部分的に使用されています。

技法

ロッテ・ライニガーが開発した伝統的な影絵アニメーションの技法は、切り紙アニメーションを応用したものです。紙や板金で作られた切り絵を糸や針金で繋ぎ合わせ、撮影台の上で1コマずつ撮影します。大藤信郎やブルーノ・ベットゲの影絵アニメーションも、この技法を用いて制作されました。

一方、ミッシェル・オスロのテレビシリーズ『Cine si』は、切り紙アニメーションとセル画を組み合わせ、さらに実写やクレイアニメも使用しています。このシリーズは再編集され、長編アニメーション『プリンス&プリンセス』として公開されました。

近年では、コンピュータアニメーションで影絵アニメーションが制作されることもあります。ミッシェル・オスロは『アズールとアスマール』の一部のシーンで3Dレンダリングを使用し、『ジャスパー・モレロの冒険』では2Dのキャラクターと3Dの背景を組み合わせています。また、『Our Man In Nirvana』や『ジャングル・ブック2』では、インドネシアの影絵芝居ワヤン・クリで使用される操作棒をコンピューターで再現しています。

カラー

初期の影絵アニメーションはモノクロで表現されることが多かったですが、ロッテ・ライニガーは『ジャックと豆の木』でフルカラーの背景を使用しました。着色した半透明の素材が、ステンドグラスのような効果を生み出しました。『Aucassin et Nicolette』では、半透明のプラスチック片でカラーパレットを作成しています。

また、『アクメッド王子の冒険』を模倣し、背景を単色または2色で表現し、そのトーンを変化させるカラーの影絵アニメーションも制作されました。キャラクターをフルカラーにすると切り紙アニメーションとなりますが、キャラクターが横向きの場合に限り「カラーの影絵アニメーション」と呼ばれることがあります。

代表的な影絵アニメーション

『アクメッド王子の冒険』（1926年、ドイツ、ロッテ・ライニガー）
『煙突屋ペロー』（1930年、日本、田中喜次）
『お蝶夫人の幻想』（1940年、日本、荒井和五郎）
『釈迦の生涯』（1961年、日本、大藤信郎）
『少女革命ウテナ』の一部（1997年）
『プリンス&プリンセス』（2000年、フランス、ミッシェル・オスロ）
『夜のとばりの物語』（2011年、フランス、ミッシェル・オスロ）

関連項目

アニメーション
ストップモーション・アニメーション
切り紙アニメーション

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