律 (仏教)

律（りつ）についての詳細

律（りつ）とは、仏教において出家修行者である僧侶が遵守すべき規則を指します。この規則は主に比丘（bhikkhu）と比丘尼（bhikkhuni）と呼ばれる僧侶たちに課されるもので、僧団の維持や統一を図るために重要な役割を果たしています。具体的には、波羅提木叉（具足戒）と呼ばれる戒律があり、これは僧侶が守るべき道徳的規範を包括しています。

戒の種類とその重要性

波羅提木叉には特に厳格な規定があり、もし僧侶が波羅夷罪と呼ばれる四つの重大な罪を犯した場合には、僧団から追放され、再び僧侶としての地位を取り戻すことは不可能となります。また、僧残罪に該当する場合でも一定の制裁が施され、修行の結果を反映した戒律遵守が求められます。

上座部仏教では227の戒律が存在し、大乗仏教では使用される律によって戒律の数が異なります。具体的に、四分律の場合、比丘は250戒、比丘尼は350戒に及びます。これらの戒律は神聖なものであり、僧侶の生活や修行の基盤を形成しています。

歴史的背景

仏教の創始者である釈迦が成道し、布教活動に挑んだ際、教団は彼の指導の下で形成されました。教団の構成メンバーが多くなるにつれて、相互の協力と対立を避けるために規則が設けられる必要が生じました。釈迦の在世中、彼はその都度必要に応じて禁忌や規則を制定し、特に多くの禁止事項が含まれていました。

釈迦の死後、教団の維持は残された弟子たちの責務となりました。彼らは最初の仏教の結集を行い、その際に持律第一として名高い優波離が中心となり律の再編成が行われました。このことにより、僧侶として経・律・論の三つを修めることが求められ、これを習得した者は「三蔵」と称されるようになります。

しかし、釈迦の死から100年後には、僧侶の財産所有の是非について上座部と大衆部の間で大論争が生じ、結果として教団は二つの派に分かれることになりました。この根本的な分裂は、それぞれの部派が律の解釈について異なる立場を取ることに起因しています。

現代における律の遵守

今日、仏教僧侶は律の遵守を重んじることが求められ、多くの派閥においては僧侶と在家信者を区別する根本的な理由として受け継がれています。タイやスリランカの南方仏教では戒律が厳しく守られ、中国からベトナムにかけての大乗仏教やチベット密教のゲルク派でも同様の傾向が見られます。ただし、日本の鎌倉仏教や後期密教の流派では、必ずしも律を重視しないアプローチや、「無戒」論といった考え方が存在し、これらはしばしば異端視されることもあります。

まとめ

律は仏教僧侶の本道を示す重要な規範であり、その遵守は修行者としての責務とされています。歴史的な経緯を持ちながらも、現代の仏教徒においてもその影響が色濃く残っていることは、仏教における戒律の普遍的価値を物語っています。

もう一度検索