後藤孝典

後藤孝典

後藤孝典（ごとう たかのり、1938年 - ）は、日本の弁護士、税理士であり、東京弁護士会と東京税理士会に所属しています。水俣病被害者救済運動に深く関わり、数々の重要な訴訟で勝利を収めてきたことで知られています。また、中小企業の再建や事業承継に関する分野でも、豊富な知識と経験を有しています。

経歴

愛知県名古屋市で生まれ、1964年に名古屋大学在学中に司法試験に合格しました。1965年に名古屋大学法学部を卒業後、1967年に東京弁護士会に弁護士登録、1973年には東京税理士会に税理士登録を行いました。1979年にはハーバード大学法科大学院にリサーチフェローとして留学し、法学研究に更なる研鑽を積みました。

1982年から1987年まで筑波大学大学院で非常勤講師として「法と経済」の講義を担当しました。2008年からは一般社団法人日本企業再建研究会の理事長を務めています。2013年には、内閣官房のふるさとづくり有識者会議委員に任命されました。

水俣病事件への取り組み

後藤孝典は、1970年代から水俣病事件の被害者救済に尽力しました。チッソによる企業の責任を追及するため、一株運動を提唱し、株主総会での企業経営陣との直接対決を支援しました。1970年度のチッソ株主総会議決取消訴訟では自ら原告となり、最高裁まで争い勝訴を勝ち取りました。

また、水俣病未認定患者の救済にも取り組み、1971年には川本輝夫ら9人の未認定患者の代理人として、熊本県知事による水俣病認定否定の行政処分の取消を求める行政不服審査請求を行いました。

1980年には、水俣病患者であった川本輝夫がチッソとの自主交渉中にもみ合いとなり傷害罪で起訴された事件（チッソ川本事件）において、最高裁で起訴そのものが違法であるとして公訴棄却の決定を勝ち取りました。

その他の主な事件

クロロキン薬害事件: 1982年、クロロキン薬害事件で一審、二審と勝訴。最高裁では勝訴とならなかったものの、医療機関や薬品会社から賠償金を獲得しました。
アニータ事件: 2001年、「青森県住宅供給公社巨額横領事件」（アニータ事件）で、青森県住宅供給公社の代理人として債権回収に尽力しました。
国学院大学映画研究会フィルム差押事件: 1969年、最高裁で勝訴。
新幹線運賃差額返還訴訟: 1978年、東京地方裁判所で勝訴。
その他: 日本の銀行の海外融資契約後のトラブル解決、外資系会社と日本商社とのジョイントベンチャー契約、バブル崩壊後の海外企業への不動産信託受益金の売却、多国籍の絡む船舶差押事件などを手がけました。

中小企業支援

2001年の商法・税法改正以降は、中小企業のための会社分割や民事再生による債務者企業の立て直しに力を注ぎ、多数の成功例を生み出しました。税務訴訟も数多く手がけています。

著書

『現代損害賠償論』（日本評論社、1982年）
『日本警察の生態学』（ウォルター・L・エイムズ著、後藤孝典訳、勁草書房、1985年）
『クスリの犯罪―隠されたクロロキン情報』（責任編集、有斐閣、1988年）
『沈黙と爆発 ドキュメント「水俣病事件」』（集英社、1995年）
『中小企業が力強く生き抜くための実務「会社分割活用法」』（中央経済社、2004年）
『小でも大を食うことができる「実践　会社法」』(かんき出版、2006年）
『「中小企業の組織再編・事業承継」 法務、税務、会計実務の主要論点』（中央経済社、2007年）
『債務超過でも出来る会社分割　企業はこうして強くなる』（かんき出版、2003年）
『［第６版大刷新］会社分割　債務超過でも企業を再建できる 企業を守り、雇用を守る！』（かんき出版、2011年）
『裁判をこえる紛争解決手続 事業承継ADRの利用法』（中央経済社。2012年）
『事業承継 「不安・トラブル」納得する解決法！』（かんき出版､2014年）
『中小企業における株式管理の実務』（日本加除出版、2015年）
『会社の相続: 事業承継のトラブル解決』（小学館､2018年）
『事例にみる一般社団法人活用の実務―法務・会計・税務・登記― 第2版補訂版』（日本加除出版、2019年）
『会社分割をきわめる─会社強靱化の新たな技法』（民事法研究会、2020年）
* 『親族外事業承継と株主間契約の税務』（民事法研究会、2021年）

後藤孝典は、弁護士、税理士としての専門知識を活かし、社会問題の解決や中小企業の発展に貢献してきた人物として高く評価されています。

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