後藤繁雄

後藤繁雄：編集の魔術師、現代アートを彩る創造者

後藤繁雄氏は、1954年大阪府生まれの編集者、ディレクター、プロデューサー、そして京都芸術大学大学院教授である。その活動は、編集という枠を超え、現代アートシーンに多大な影響を与え続けている。

同志社大学文学部卒業後、京都で美術・文筆活動を開始。学生時代には、自ら編集事務所「edition archives」を設立し、幻想文学専門誌『ソムニウム』を創刊するなど、独自の活動を展開した。この頃から、広告や美術の演出、美術制作といった多様な表現手法に触れ、独自の編集スタイルを確立していくことになる。

若くしてフリーの[編集者]]となり、中沢新一氏の『チベットのモーツァルト』編集など、数々の書籍を手掛ける。秋山道男氏や森永博志氏らとの協働を通して、編集の枠を超えたクリエイティブな活動に邁進。その後、音楽雑誌『ロックンロール・ニューズメーカー』の編集長を経験し、[[イエロー・マジック・オーケストラ]をはじめとする音楽関係の企画にも多数携わるなど、活動の幅を広げていく。

1990年代半ばからは、写真集やアートブックの編集・プロデュースに本格的に取り組み始める。リトルモア社で高橋恭司氏、長島有里枝氏、ホンマタカシ氏らの写真集を手がけたのを皮切りに、坂本龍一氏、細野晴臣氏、篠山紀信氏、荒木経惟氏、蜷川実花氏、名和晃平氏といった著名アーティストの作品制作にも関わる。そして、自身もディレクターを務める出版社artbeat publishersを設立し、独自の出版活動を展開した。

2000年代に入ると、コンテンポラリーアートの展覧会や企画のプロデュースにも積極的に関与。やなぎみわ氏、澤田智子氏、田名網敬一氏、五木田智央氏といった現代アーティストの個展・グループ展のキュレーションを手掛け、さらに日本と台湾のアーティスト交流展「trans-plex」をディレクションするなど、国際的な舞台でも活躍するようになる。

2008年には、現代アート写真を取り扱うギャラリーG/P galleryを開廊。若手写真家の発掘・育成にも力を入れ、ポートフォリオレビューなどを開催。また、オランダ、アムステルダムや中国廈門での国際的な写真展にも共同キュレーターとして参加し、あいちトリエンナーレ2016では「トランスディメンション－イメージの未来形」をディレクションするなど、国際的な活動も積極的に行っている。

後藤氏の活動は、出版活動にとどまらず、教育にも及ぶ。1996年から「編集を開発する私塾スーパースクール」を開催し、後進の育成にも尽力。京都造形芸術大学（現京都芸術大学）教授としての経験も活かし、数々の若手アーティストを指導してきた。文化庁メディア芸術祭審査員も務めるなど、日本の文化・芸術の発展に貢献している。

「独特編集」をモットーに、三越伊勢丹新宿店リニューアルプロジェクトでは、名和晃平氏、篠山紀信氏ら著名アーティストを起用し、ビジュアル面での統括ディレクションを担当。近年では、FUJIFILM Business Innovation社と連携し、デジタル出力機を活用した新しい出版ブランドNEOTOKYOZINEを立ち上げ、コロナ禍においても革新的な出版活動を展開している。

後藤繁雄氏の活動は、単なる編集の仕事を超え、現代アートを牽引するプロデューサー、キュレーター、教育者としての役割を担っている。その多様な活動と、現代アートシーンへの貢献は、今後も日本の文化・芸術界に大きな影響を与え続けるであろう。

主要著書・編著

後藤氏は、自身の活動や考え方をまとめた著書も多数出版している。主な作品には、『ウェイスティッドランド The day book 1 1990-1992』、『東京広告写真』、『トランスパランス The day book 2 1993-1995』、『ニュー・テキスト』、『独特對談 Dialogue 2 1994-1998』、『写真という名の幸福な仕事』、『僕たちは編集しながら生きている』、『アート戦略／コンテンポラリーアート虎の巻』などがある。これらの書籍は、後藤氏の編集哲学や、現代アートへの深い洞察を示す貴重な資料となっている。

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