後陳朝

後陳朝の興亡

後陳朝は、15世紀初頭のベトナム北部を舞台に、短期間ながらも激動の歴史を刻んだ王朝です。1407年から1414年、そして1426年から1428年という二つの期間に存在し、その間、3人の皇帝が即位しましたが、いずれも傀儡に過ぎず、実質的な支配力は非常に限定的でした。

成立の背景

後陳朝の成立は、陳朝が重臣の胡季犛によって簒奪されたことに端を発します。胡季犛は国制を固める一方、反対勢力を粛清したため、国内は不安定でした。さらに明の永楽帝が陳朝の復権を求めたのに対し、胡季犛が拒否したことで、明軍の侵攻を招きます。1407年、明軍によって胡季犛は捕らえられ、胡朝は滅亡。ベトナムは明の直接支配下に置かれることになりました。

抗明闘争と王朝の成立

明の過酷な支配に対し、ベトナム各地で反乱が勃発しました。1407年10月、陳朝の復興を願う陳肇基は、陳朝の皇族であった陳頠を擁立し、簡定帝として即位させました。これにより、後陳朝が成立します。簡定帝は反明勢力を糾合し、明軍に対抗しますが、明軍の圧倒的な兵力と物量の前に苦戦を強いられます。1408年には、逋姑の戦いで一時的に明軍を撃退しますが、この勝利後、簡定帝は功臣である鄧悉と阮景真を誅殺してしまいます。この暴挙は、反乱勢力内部の分裂を招き、鄧悉の子である鄧容や阮景真の子である阮景異らは、簡定帝を見限り、陳季拡を新たな皇帝（重光帝）に擁立します。

滅亡への道

後陳朝は、内部対立と明軍の攻勢により、次第に追い詰められていきます。1411年には明軍が反撃を開始し、1413年には重光帝を含む主要な指導者が次々と捕らえられ、後陳朝は一時滅亡しました。重光帝は明に送られる途中で亡くなったとされています。

後陳朝の終焉と後黎朝の成立

その後、黎利という英雄が反明の兵を挙げ、明軍を破り、ベトナムの独立を回復しました。黎利は、一時的に陳朝の末裔とされる胡翁を天慶帝として擁立しますが、これは王朝創設までの時間稼ぎでした。1428年、黎利は胡翁を殺害し、自らが皇帝として後黎朝を開き、後陳朝は完全に滅亡しました。

後陳朝の教訓

後陳朝は、短命に終わった王朝でしたが、ベトナムの民族意識の高まりと、後の黎朝成立への重要な過程を示すものです。その歴史は、外敵に対する抵抗と、内部の結束の重要性を教えてくれます。また、傀儡政権の限界と、真のリーダーシップの必要性を浮き彫りにしています。

歴代皇帝

1. 簡定帝 陳頠（在位：1407年 - 1409年）
2. 重光帝 陳季拡（在位：1409年 - 1414年）
3. 天慶帝 陳暠（在位：1426年 - 1428年）

元号

興慶：1407年 - 1409年
重光：1409年 - 1414年
* 天慶：1426年 - 1428年

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