徐甲虎

徐甲虎（ソ・ガポ）：激動の時代を駆け抜けた実業家

徐甲虎（ソ・ガポ、日本名：阪本栄一）は、1914年3月21日に日本統治下の慶尚南道で生まれ、1976年11月22日に63歳で亡くなった在日韓国人の実業家です。彼は、日本と韓国の繊維産業の発展に大きく貢献し、特に阪本紡績と邦林紡績の創業者として知られています。本貫は達城徐氏です。

生い立ちと成功への道

徐甲虎は、彦陽公立普通学校を卒業後、1929年に単身で日本に渡りました。当初は商家の丁稚、飴売り、廃品回収、タオル工場の工員など、様々な職を転々としながら、繊維産業に関する知識やノウハウを蓄積していきました。第二次世界大戦末期には、軍需物資の取引によって財を成し、繊維工業に進出する足掛かりとしました。

戦後の事業展開と韓国への貢献

戦後、朝鮮への帰国者に対する財産搬出制限があったため、徐甲虎は日本に留まりました。そして、1948年に大阪府で阪本紡績を設立し、朝鮮特需によって資本を蓄積しました。サンフランシスコ講和条約の発効後には、金溶植からの連絡を受け、韓国銀行東京支店から資金を借り入れ、駐日デンマーク公使の邸宅（元松方正義邸）を購入し、駐日大韓民国代表部（現在の駐日本国大韓民国大使館）に貸与しました。1962年には、この代表部の敷地と建物を韓国に寄贈し、本国への投資を本格化させました。

1963年1月には、韓国産業銀行傘下の泰昌紡織株式会社を買収し、阪本紡績株式会社を設立。1967年には社名を邦林紡績株式会社に変更し、韓国における紡績業の発展に大きく貢献しました。

韓国での評価と晩年

しかし、韓国国内での評価は必ずしも肯定的ではありませんでした。1971年には、韓国国会で新民党の議員から不正蓄財の疑いを追及されるなど、厳しい状況に立たされました。三清洞の自宅で63歳で亡くなり、墓所は2回の改葬を経て、現在は慶尚北道永川市の万仏寺にあります。

栄誉と家族

徐甲虎は、その功績を称えられ、数々の栄誉に輝いています。産業発展や海外市場育成、殖産、輸出への貢献などが評価され、国民勲章も受章しました。また、駐日韓国大使館の新築に際し、敷地を無償で寄贈した功績を讃え、大使館内に「東鳴室」が開館しました。

家族としては、朴外得との間に三男三女をもうけました。娘婿には、歌手の小畑実や伊藤忠インターナショナルの取締役会長を務めた人物がいます。麻布十番の駐日大使館敷地を購入した背景には、日本国籍を剥奪された李垠に住居を提供したいという思いがあったとされています。

まとめ

徐甲虎は、激動の時代を生き抜き、日本と韓国の経済発展に貢献した人物です。苦労の末に繊維産業で成功を収め、駐日大韓民国大使館の設立に尽力するなど、その功績は多岐にわたります。しかし、韓国国内での評価は複雑であり、その生涯は光と影が入り混じったものでした。彼の足跡は、両国の歴史に深く刻まれています。

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