徐義

徐義（じょ ぎ）：西晋の皇后を支えた乳母の生涯

徐義（221年 - 298年）は、西晋時代の皇后・賈南風（かなんふう）の乳母として知られています。彼女の出自は青州城陽郡東武県であり、夫の姓である徐を冠して呼ばれていました。徐義の息子は徐烈（じょ れつ）です。

墓誌銘が語る徐義の生涯

歴史書にはほとんど記録が残されていませんが、1953年に発掘された『賈南風乳母徐義墓誌銘』によって、彼女の詳しい事績が明らかになりました。以下に、墓誌銘の内容を基に、徐義の生涯を辿ります。

徐義は、元々は海浜地域の出身でしたが、故郷の荒廃によって司州河内郡へと移り住みました。そこで太原の徐氏と結婚し、子供たちを育てながら、その聡明さと慈愛深さで近隣に知られる存在となりました。

名家であった賈充（か じゅう）の夫人・郭槐（かく かい）は、子供たちが相次いで夭折したため、徐義に賈南風とその妹である賈午（か ご）の乳母を依頼しました。徐義は姉妹を愛情深く、献身的に育てました。

賈南風が13歳になった頃、賈充は司馬炎（しば えん）の腹心となり、泰始6年（270年）には、賈南風は皇太子・司馬衷（しば ちゅう）の妃に選ばれました。徐義は賈南風に付き添って東宮に入り、皇后となった賈南風は徐義を深く信頼し、何をするにも彼女の意見を求めました。

太康3年（282年）には、徐義はその功績により司馬炎から中才人（ちゅうさいじん）という官位を授けられ、息子の徐烈も司徒の署軍謀掾（しょぐんぼうえん）に任じられました。

皇后を救った機転

太熙元年（290年）に司馬炎が崩御し、恵帝・司馬衷が即位すると、徐義は良人（ろうじん）という官位を与えられました。永平元年（291年）には、逆臣・楊駿（よう しゅん）が挙兵し国家の危機に陥りましたが、徐義は楊太后（ようたいごう）に呼ばれた賈南風を支え、機転を利かせてその窮地を救いました。楊駿が誅殺された後、徐義はその功績を評価され、美人（びじん）という官位と絹千匹、従者20人を下賜されました。その後も皇后からの信頼は厚く、元康5年（295年）には息子の徐烈が太子の千人督（せんにんとく）に任じられました。

波乱の時代を生きた乳母の死

しかし、元康7年（297年）に徐義は病に倒れ、自宅で療養することになりました。朝廷からは宦官が見舞いに訪れ、宮中の医者や官吏も派遣されましたが、元康8年（298年）に78歳で亡くなりました。皇后・賈南風は徐義の死を深く悼み、多くの品々を下賜し、手厚い葬儀を行いました。翌年には墓碑が建てられ、その功績が永く称えられました。

徐義は、激動の時代を生きた女性であり、皇后・賈南風の乳母として、その生涯を宮廷に捧げました。彼女の聡明さと慈愛深さ、そして危機を乗り越える機転は、後世に語り継がれるべきでしょう。

参考文献
『晋書』
『賈南風乳母徐義墓誌銘』

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