徐階

徐階（じょ かい、1503年 - 1583年）は、明代中期に活躍した政治家であり、字を子升、号を存斎と称しました。現在の上海市松江区にあたる松江府華亭県の出身です。

科挙においては、嘉靖2年（1523年）に見事進士に合格し、その中でも第三位という高い成績（探花）を収めました。彼の同郷で、後に茶人として名を馳せる陸樹声も、嘉靖20年（1541年）に進士となっています。徐階は、当時勃興していた陽明学派の俊英として将来を嘱望されました。しかし、即位当初の嘉靖帝の意向を巡る大礼の議において、徐階は反対の立場を取ったため、一時的に左遷されることとなります。

その後、徐階は嘉靖31年（1552年）に、その卓越した青詞の才能が嘉靖帝の目に留まり、内閣大学士として中央政界に復帰します。当時、明朝は北方の異民族（北虜）の侵入や、南方の倭寇（南倭）の活動に悩まされていましたが、徐階はこれらの問題に対処する政策を立案し、嘉靖帝からの信頼を勝ち得ました。さらに、徐階は同じく青詞の才で皇帝に取り入り、政治を壟断していた厳嵩・厳世蕃父子を弾劾し、政界から追放することに成功します。

徐階の政治姿勢は、信賞必罰を重視し、嘉靖帝の気まぐれな処罰を抑制することに努めました。嘉靖帝の死後、徐階はそれまで積み重なっていた弊政を刷新し、大礼の議で処罰された人々を赦免しました。彼は内廷の粛正を図りましたが、それが原因で高拱と宦官との結びつきを招き、隆慶2年（1568年）に官を辞することになります。しかし、徐階は正義を重んじる官僚たちのリーダーとして、朝野からの人望を集めました。

徐階は郷里である松江に広大な荘園を所有していたことでも知られています。その規模は二十四万畝にも及び、江南地方最大級と言われました。後に巡撫となった海瑞によって、その広大な荘園の存在を指摘されたこともありました。

徐階は、その卓越した政治手腕と、時に大胆な行動力によって、明代の歴史に名を刻んだ人物です。しかし、彼の晩年は政争に翻弄され、必ずしも平穏なものではありませんでした。それでも、彼は多くの人々に支持され、その影響力は後世にも及んでいます。

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