松江府

松江府（しょうこうふ）は、中国にかつて存在した地方行政区画であり、元代から民国初年にかけて、現在の上海市一帯に設置されていました。この地域は、歴史的に重要な役割を果たし、その変遷は中国の歴史と深く結びついています。

松江府の成立と変遷

松江府の歴史は、1277年（元代の至元14年）に、華亭県に華亭府が置かれたことに始まります。しかし、その翌年の1278年（至元15年）には、華亭府は松江府と改称され、華亭県を管轄するようになりました。1292年（至元29年）には、華亭県の北部が分割され、上海県が新たに設置されました。これにより、松江府は、この地域における主要な行政機関としての役割を担うようになりました。

明代に入ると、1542年（嘉靖21年）に、華亭県と上海県の一部を合わせて青浦県が設置されました。この時期、松江府は南直隷に属しており、明末期には倭寇の被害に悩まされました。特に嘉靖年間には、その被害状況が史書に数多く記録されています。

清朝が成立すると、1656年（順治13年）に婁県、1724年（雍正2年）には奉賢県、金山県、南匯県が次々と設置され、福泉県も一時的に設置されましたが、1743年には青浦県に編入されました。また、1805年（嘉慶10年）には川沙庁が設置されました。この頃の松江府は江蘇省に属しており、清末には太平天国の乱の影響を受け、太平天国軍による3度にわたる攻撃を受けましたが、清朝の守備軍はこれをすべて撃退しました。

松江府の終焉

1911年（宣統3年）に辛亥革命が勃発すると、松江府は同年11月6日に独立を宣言し、軍政分府を設置しました。その後、中華民国が成立すると、1913年（民国2年）には、府制が廃止されたことに伴い、松江府も廃止されました。これにより、管轄していた各県は江蘇省の直轄となりました。松江府の廃止は、中国の行政制度が大きく変化する中で、一つの時代の終わりを象徴する出来事でした。

松江府は、その歴史を通じて、地域の政治、経済、文化の中心として重要な役割を果たしました。その変遷は、中国の歴史における地方行政制度の変化を理解する上で、重要な事例と言えるでしょう。

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