海瑞

海瑞（かい ずい）

海瑞は、明代中期に活躍した政治家です。字は汝賢、国祥、号は剛峰と称しました。正徳9年（1514年）に瓊州府瓊山県（現在の海南省）に生まれ、万暦15年（1587年）に没しました。

生涯

海瑞は、嘉靖年間に郷試に合格し官僚としての道を歩み始めました。様々な職を歴任した後、嘉靖45年（1566年）に戸部主事の職にあった時、嘉靖帝の道教への過度な傾倒を諫める上疏を提出しました。当時の嘉靖帝は、不老長寿の術に没頭し、政治を顧みない状態でした。国が内憂外患に苦しむ中、誰も皇帝を諫める者がいない状況で、海瑞は自らの危険を顧みず、臣下としての忠義を尽くしたのです。

この上疏により、海瑞は投獄されることになります。嘉靖帝は海瑞の逮捕を厳命しましたが、宦官の黄錦は「海瑞は死を覚悟して上疏しており、逃げるような人物ではない」と進言しました。その言葉通り、海瑞は投獄されても動じることはありませんでした。嘉靖帝は、この年の12月に道士が献上した丹薬を服用し急死します。その後、海瑞は釈放され元の官職に復帰し、大理寺丞に昇進しました。

嘉靖帝の死後、隆慶帝、万暦帝の時代には、張居正が政権を握っていました。この間、海瑞は要職から遠ざけられていましたが、張居正の死後、南京吏部右侍郎、南京右僉都御史を歴任しました。その謹厳な態度は変わらず、万暦帝に対しても政策提言を行いましたが、その意見が聞き入れられることはありませんでした。海瑞は在職のまま亡くなり、その墓は現在の海南省海口市にあります。

海瑞罷官

1961年、歴史家の呉晗によって歴史劇『海瑞罷官』が発表されました。この劇は、海瑞が悪徳官僚を懲らしめ、冤罪を被った人々を救済し、農民から没収された土地を農民に返すという内容でした。しかし、この劇が発表されて間もなく、1965年に姚文元が「新編歴史劇『海瑞罷官』を評す」という論文を発表しました。この論文で姚文元は、『海瑞罷官』が、反革命分子の名誉回復や、集団化された農地の農民への再分配を密かに訴えていると批判しました。

これは、明らかな曲解でしたが、毛沢東によって『海瑞罷官』と彭徳懐解任が結びつけられ、呉晗への批判が激化しました。1966年には、呉晗、廖沫沙、鄧拓の「三家村グループ」が反革命分子として失脚、投獄され、呉晗と鄧拓は非業の死を遂げました。

『海瑞罷官』を巡るこの出来事は、文化大革命の発火点となり、姚文元は四人組の一員として反革命分子の摘発に積極的に関与することになります。この論文は、江青が張春橋と共謀して秘密裏に執筆させたものでした。また、康生も『海瑞罷官』が廬山会議や彭徳懐と関連があることを指摘し、毛沢東に示唆したとされています。

海瑞の評価

海瑞は、その清廉潔白さと、権力におもねらない姿勢から、後世に高く評価されています。特に、皇帝に直接諫言するという勇気ある行動は、中国史において特筆すべき出来事として語り継がれています。

登場作品

テレビドラマ

* 『大明王朝 〜嘉靖帝と海瑞〜』（2006年、中国、演：ホァン・チーチョン）

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