御一家

御一家についての考察

御一家（ごいっか）は足利将軍家に属する氏族の中で、特に重要な位置を占めていた家系を示しています。この家系には吉良氏、渋川氏、石橋氏が含まれており、それぞれが将軍職を継承する権利を持ち、室町幕府において特別な地位を享受しました。特に、吉良氏は御一家の中でも最上位に位置づけられ、管領とほぼ同格の扱いを受けていたのです。しかしながら、石橋氏と渋川氏の関係については、家格の上下が明確に定義されていなかったことも指摘されています。

研究者の谷口雄太は、「御一家」についての異なる二つの用法を示しました。一つは、従来の吉良、渋川、石橋の三氏を指すもので、もう一つは足利氏の一門に属する氏族たちを示しています。谷口は自らの造語として「（足利）御三家」を提唱し、前者をこの用語で、後者を「（足利）一門」と呼ぶことを提案しました。2022年の著作では、改めて「御三家」という表現が使用されています。

御一家は室町幕府とその前身の鎌倉府に別個に組織されていましたが、これら三氏は合わせて「御一家衆」と呼ばれました。石橋氏は関東地方の武士であったため、実質的には吉良氏と渋川氏の二氏が中心となっていました。また、石塔氏や一色氏など、他の家系も御一家に含まれる場合があったが、これらについての明確な証拠は乏しかったのです。

吉良・渋川・石橋は、足利義氏の子孫であり、特に吉良氏は庶兄たちから始まる家系で、鎌倉時代から「足利」の名を名乗ることが許されていました。しかし、足利氏の中心者が征夷大将軍に任じられたことにより、他の庶子たちが「足利」の名を使うことが制限されていくことになります。谷口はこれら三氏が特別な地位を与えられるようになったのは、1425年以降の将軍職が空位の期間に起因すると明らかにしました。

この間、将軍家の血統が断絶の危機に直面し、御一家が形成されたと考えられています。木下聡は、御連枝の中断を理由に挙げ、御一家がこの空白を埋める役割を果たしたとしています。この事実により、鎌倉公方家や斯波氏は将軍家の継承から排除され、従来の地位を失うことになりました。特に斯波氏は元々有力な存在であったにも関わらず、御一家への昇格がなされなかったと説明されています。

吉良氏の庶流であった今川氏は、御一家の地位に対して非常に関心を持っていたことが記録に残されています。このように、御一家の成立は室町幕府内の権力構造に大きな影響を与えつつ、将軍家やその家系の継承に深い関わりを持っていたことを示しています。御一家はその後の歴史においても重要な役割を果たし、足利家の血脈を維持するための制度として機能しました。

参考文献

• - 谷口雄太『足利将軍と御三家: 吉良・石橋・渋川氏』(歴史文化ライブラリー 559、吉川弘文館、2022) ISBN 978-4-642-05959-6
• - 谷口雄太「足利氏御一家考」（佐藤博信 編『関東足利氏と東国社会 中世東国論:5』（岩田書院、2012年） ISBN 978-4-87294-740-3）
• - 谷口雄太「足利一門再考 -[足利的秩序]とその崩壊-」『史学雑誌』122巻12号（2013年）

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