管領

管領とは

管領（かんれい）は、室町幕府における役職の一つで、将軍を補佐し幕府の政治を統括する最高職です。足利将軍家の家宰である執事の後継として、幕府の重鎮として重要な役割を担いました。

歴史

執事から管領へ

室町幕府草創期、初代将軍足利尊氏を補佐したのは執事でした。当初、尊氏の弟である足利直義が訴訟などの公権的な支配関係を担当し、執事は私的な支配関係を束ねるという二元体制でした。高師直、仁木頼章、細川清氏などが執事を務めました。

しかし、執事の権限拡大を主張する高師直と、従来の秩序を重視する直義との対立が深刻化し、観応の擾乱が勃発。直義派は衰退し、2代将軍足利義詮の時代には、執事の権限が強化されるとともに、幕府の体制は一元化に向かいました。

1360年、執事の細川清氏が仁木義長との勢力争いに勝利しますが、翌年には佐々木道誉との確執により幕府を追放され、南朝に降伏します。その後、将軍親裁の時代を経て、1362年には斯波義将が執事に就任。父である斯波高経が後見人となりました。当初、高経が執事就任を求められましたが、斯波氏は足利一門でありながら、足利本家と同格の家柄であったため、足利家臣の職である執事に就くことを拒みましたが、度重なる要請に応じました。

この頃から、執事に代わって管領という役職が設けられるようになります。管領とは「天下を管領する」という意味であり、執事よりも更に上位の役職として認識されていました。

ただし、この時の管領は臨時の地位であり、斯波高経が管領、義将が執事と別々に任じられていたとする説もあります。また、細川頼之が管領に就任した後も、頼之を「執事」、関東管領（かつての関東執事）の上杉憲顕を「管領」と称した書状も存在しており、関東における関東執事から関東管領への変更が、幕府中央における執事から管領への変更よりも先であった可能性も指摘されています。

細川頼之の就任と失脚

1366年、斯波高経・義将は佐々木道誉らとの対立により失脚。再び将軍の親裁となりますが、翌年、将軍義詮の死の直前、細川頼之が管領に就任しました。頼之は幼い3代将軍足利義満を補佐し、幕府体制の安定化に尽力しました。この時期に、裁判機関である引付衆の職権が管領に吸収され、政務の一切を統括するようになりました。また、この頃から諸文書における「管領」の呼称が定着しました。足利義満の元服の際には、管領の細川頼之が加冠役（烏帽子親）を務めたことから、室町幕府の将軍が元服する際には管領が加冠役を務める慣例が成立しました。

細川頼之は、九州探題に今川了俊を任命して南朝勢力の掃討を進め、南朝との講和交渉が決裂すると、楠木正儀を味方につけて南朝を攻撃し、南朝の抵抗をほぼ終結させました。また、半済令を出し、武士の既得権を認める一方、有力荘園領主の一円支配地を保護することで、双方の利害対立に一定の決着を図りました。

1379年、頼之は康暦の政変で失脚し、斯波義将が復帰します。その後、約40年間、斯波氏と細川氏が管領を交互に務めましたが、1398年以降は、斯波氏、細川氏、畠山氏の三家が交代で管領を務めることになりました。

管領権力の抑制

4代将軍足利義持以降、幕府の重要案件決定は宿老会議で行われるようになり、管領の権力は低下しました。また、経済的な負担から、管領を辞任する者も現れました。

6代将軍足利義教は、奉行人制度や将軍直属軍である奉公衆を強化し、将軍親裁を推進しました。一方、軍事面では、将軍の命令の一部を管領奉書で代用させるようになり、管領の役割が拡大しました。これは、管領の権限強化を意図したものではなく、将軍による統制を強化しつつ、管領に軍事指揮を補佐させることで、将軍主導の政務を確立する意図がありました。

1441年、義教が赤松満祐に暗殺されると、管領細川持之は直ちに守護を召集し、義教の嫡男義勝を7代将軍に擁立しました。幼少の義勝に代わり、管領主導の政治体制を整えて満祐を討伐しました。その後、義勝の死後、弟の義政が8代将軍に擁立され、管領は政治を主導しますが、細川勝元と権力闘争を繰り広げ、畠山持国も失脚しました。

形骸化、消滅

1452年からは勝元が12年間管領を務めますが、その間、将軍義政は親政を志し、側近を登用して管領を通さずに命令を下達するようになります。これらの政策は守護の反発を招き、1466年に文正の政変が起こり、義政の親政は挫折しました。

1467年からの応仁の乱では、管領の斯波義廉は西軍に、将軍義政らは東軍に分かれ、将軍と管領が分裂しました。管領ではなかった勝元は、管領奉書に代わり自身の発給文書によって軍事指揮を行うようになり、管領の軍事的権限を失墜させる結果をもたらしました。勝元の死後は、畠山政長と細川政元が交代で管領を務めましたが、政長の不在や政元の短期間在任が続き、管領は形骸化しました。

一方、義政は息子の義尚に将軍の地位を譲った後、公家の日野勝光に御前沙汰に参画させることで、管領の職務であった訴状の受付や将軍の裁許手続を行わせるようになり、以降の将軍も側近集団に同様の役割を担わせました。

応仁の乱後、将軍権力と斯波氏・畠山氏が衰退する中、政元の細川氏が管領職を独占します。政元は1493年の明応の政変で将軍を廃立し、専制権力を確立しました（京兆専制の成立）。しかし、後継者争いで政元が暗殺され、細川氏は分裂し、衰退しました。1564年、細川氏綱の死後、管領は自然消滅の形で廃絶したとされていますが、1531年に細川高国が自害した時点で廃絶したとする説もあります。

通説では、高国の後に晴元・氏綱が管領に就任したとされていますが、同時代の一次史料にはそれを示す記述がなく、疑問視する説もあります。近年の説では、管領は儀式の時だけに任命される臨時の役職に過ぎなくなっており、細川京兆家の当主も管領の地位によらず、将軍の擁立者・後見人として政治的権力を行使する存在であったとされています。

執事・管領の一覧

（一覧は省略）

三管領家

室町幕府の3代将軍足利義満が定めたとされる、管領職に就任する家柄のこと。斯波氏、細川氏、畠山氏の三家を指します。

それぞれの家は嫡流の宗家と庶流の分家に分かれていましたが、管領を代々任じられたのは宗家であり、それぞれ「斯波武衛家」、「細川京兆家」、「畠山金吾家」と呼ばれました。三管領はそれぞれ分裂し、戦国時代を戦いましたが、安土桃山時代まで生き残り、織田信長の親族と縁組するなどして政治的にも重要度を回復しました。江戸時代には高家として幕府に仕えたり、大名家の家老職として地方に下るなど、独自の運命を辿りました。

脚注

（注釈、出典、参考文献は省略）

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