御連枝

御連枝：高貴な家系の分家とその歴史

「御連枝（ごれんし）」とは、天皇家、将軍家、大名家など、高貴な家系の兄弟の中で、仏門に入らずに特別な地位を与えられ、新たな家系を築いた者、あるいはその家系を指す敬称です。

この言葉の語源は、「連枝」にあります。これは、一つの根から伸びる複数の枝が連なっている様子を表し、本家から分かれた家系が、本家と根幹を同じくするという意味合いを含んでいます。

御連枝の広義と狭義

御連枝の解釈には、広義と狭義があります。

広義には、高貴な支配階級の家系において、当主の兄弟が独立して家系を築いた場合、その家系全体を指します。具体的には、天皇家から分かれた宮家、徳川将軍家から分かれた御三家（尾張徳川家、紀伊徳川家、水戸徳川家）、御両典、御三卿、そして藩主家から分かれた支藩などが含まれます。これらの家系は、本家の後継者不在の際には家督を継承する可能性も秘めていました。

狭義には、江戸時代に御三家からさらに分家して新たに藩を築いた親藩大名家を指す場合がありました。御三家から分かれた家系は、本家筋と深い繋がりを持ちながらも、独立した勢力として発展していきました。

御三家からの連枝の例

御連枝の代表例として、徳川御三家からの分家が多く挙げられます。以下に、その一部を紹介します。

尾張徳川家（名古屋藩）からの連枝

大窪松平家（梁川松平家）：第2代藩主徳川光友の庶長子、松平義昌が陸奥梁川藩に封じられたことにより創設。
四谷松平家（高須松平家）：第2代藩主徳川光友の次男、松平義行が信濃高井藩、後に美濃高須藩に封じられたことにより創設。
川田窪松平家：第2代藩主徳川光友の十一男、松平友著が内分分知によって創設。

紀伊徳川家（和歌山藩）からの連枝

西条松平家：初代藩主徳川頼宣の三男、松平頼純が伊予西条藩に封じられたことにより創設。
高森松平家：第2代藩主徳川光貞の三男、松平頼職が越前高森藩に封じられたことにより創設。
葛野松平家：第2代藩主徳川光貞の四男、松平頼方が越前葛野藩に封じられたことにより創設。

水戸徳川家（水戸藩）からの連枝

高松松平家：初代藩主徳川頼房の庶長子、松平頼重が常陸下館藩、後に讃岐高松藩に封じられたことにより創設。
守山松平家：初代藩主徳川頼房の四男、松平頼元が常陸額田藩、後に陸奥守山藩に封じられたことにより創設。
石岡松平家：初代藩主徳川頼房の五男、松平頼隆が常陸保内藩、後に常陸府中藩に封じられたことにより創設。
宍戸松平家：初代藩主徳川頼房の七男、松平頼雄が常陸宍戸藩に封じられたことにより創設。

その他の例

浄土真宗においては、東西本願寺の門主に連なる家系の一族・一家衆を「御連枝」と呼ぶこともありました。

このように、「御連枝」は、単なる分家というだけでなく、本家と深い繋がりを持ち、高い地位と権力を維持した家系を指す重要な概念であったと言えます。それぞれの家系の歴史や役割を理解することで、江戸時代の社会構造や政治体制への理解が深まります。

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