御寮人

御寮人（ごりょうにん）とは

「御寮人」とは、中世以降に用いられた、主に女性に対する敬称の一つです。当初は貴人やその子女を指す言葉として使われていましたが、時代とともに意味合いが変化し、近世以降は中流の町人社会でも用いられるようになりました。

語源と歴史

「御寮」という言葉は、元々は貴人やその子女を敬って言う言葉で、直接名前を呼ぶことを避けるための婉曲的な表現でした。「○○の方」「○○の局」などと同様の用法で、近世以前は男女問わず使われていました。例えば、『太平記』には、「万寿御寮」という人物が登場する記述があります。

しかし、近世になると、主に貴人の娘や妻に対して使われることが多くなりました。武田信玄の側室である諏訪御料人や禰津御寮人などがその例として挙げられます。

商家における「御寮人」

大阪を中心とした西日本の商家では、「御寮人」は主に「若奥さん」を意味する言葉として使われていました。これは、商家における独特の呼称であり、「御寮様」が「ごりょうさん」「ごりょんさん」などと変化したものです。

立場による使い分け

商家では、奉公人や外部の者が、大旦那（隠居した前主人）の娘や、旦那（当主）の妻に対して「御寮人」と呼びました。ただし、通常は年配の女性には使いませんが、慣習的にそのまま呼び続ける場合もありました。

商家における「御寮人」の役割

伝統的な商家では、女性が主人になることは通常ありません。旦那が隠居したり、亡くなったりする際、男子がいればその後継者に指名しますが、女子しかいない場合は、外部から婿を取って後継者にする（養子旦那）のが一般的でした。この場合、先代の娘は「前主人の娘」という意味で「御寮人」と呼ばれました。また、若旦那がそのまま後継者になる場合は、その嫁（若御寮）を「御寮人」と呼ぶこともありました。

「女将」との違い

「御寮人」という呼称は、「女将」と一部重複する部分もありますが、全く同じ意味ではありません。店の種類や環境による慣習的な面が強く、厳密に区別するのは難しいです。一般的には、明確に「主人」として認識されている場合は「女将」と呼ぶことが多いです。

その他の用法

蕗谷虹児作詞の「花嫁人形」では、「花嫁御寮」という言葉が使われています。これは、花嫁を敬って呼ぶ言葉として使われている例です。

まとめ

「御寮人」という言葉は、時代や社会の変化とともに、その意味合いや使われ方を変えてきました。元々は貴人を指す言葉でしたが、商家では「若奥さん」を指す言葉として定着するなど、多様な意味を持つ言葉として使われています。その使われ方を理解することで、当時の社会や文化をより深く理解する手がかりとなるでしょう。

関連語

御台所
番頭
* 丁稚

もう一度検索