諏訪御料人

諏訪御料人（すわごりょうにん）

諏訪御料人（1530年 - 1555年）は、戦国時代の武将、武田晴信（後の信玄）の側室であり、武田勝頼の生母として知られています。彼女は諏訪氏の当主、諏訪頼重と側室の間に生まれました。実名は史料には残っておらず、一般的には「諏訪御料人」や「諏訪御前」といった尊称で呼ばれています。また、異母弟には、頼重の後室の子である寅王（千代宮丸）がいます。

生涯

諏訪御料人の正確な生年は不明ですが、『甲陽軍鑑』によれば、14歳で信玄に嫁いだとされています。これにより、1530年頃の生まれと推測されています。その美貌は『甲陽軍鑑』でも「かくれなきびじん」と称されています。

彼女の父、諏訪頼重が諏訪氏の当主であった頃、諏訪氏と甲斐の武田氏は同盟関係にありました。しかし、1541年に武田信虎が嫡男である晴信によって追放されると、状況は一変します。その後、上杉氏との和睦を巡り、武田氏と諏訪氏の関係は悪化、1542年には武田氏が諏訪へ侵攻し、諏訪氏は滅亡、頼重は甲府で亡くなります。

当初、信玄は頼重と後室の子である千代宮丸を擁立しましたが、後にこれを撤回。頼重の娘である諏訪御料人を側室に迎え、生まれた男子に諏訪家を継承させる道を選びました。

諏訪御料人が武田氏に嫁いだ時期については、1543年説と1545年説がありますが、確定的な史料はありません。1543年説は、『高白斎記』の記述を根拠としていますが、この記述が本当に諏訪御料人の輿入れを指しているのかについては異論もあります。一方、1545年説は『甲陽軍鑑』の記述に基づいています。

1546年には、諏訪御料人は勝頼を出産します。この婚姻には、武田家中で反対論もあったとされていますが、山本勘助の説得によって実現したという逸話も残っています。

彼女は1555年に死去しました。法名は「乾福寺殿梅巌妙香大禅定尼」とされています。墓所は長野県伊那市高遠町の建福寺です。また、長野県岡谷市の小坂観音院にある墓は、小説の影響によって後世に建てられたものです。

生母・麻績氏（お太方様）

諏訪御料人の生母である麻績氏は、娘の死去後も、武田家において重要な役割を果たしました。勝頼の祖母として、武田氏滅亡まで存命し、「お太方様」と称されました。夫の頼重が亡くなった後は、娘と共に禰津元直の元に身を寄せたとされています。麻績氏は、勝頼と共に高遠城で暮らしていたとされ、勝頼による逆修供養も行われました。また、勝頼の嫡男である信勝と共に、諏訪南宮への棟札にも名前が記されています。さらに、勝頼の家臣への所領付与にも影響力を持っていたことが史料から読み取れます。

麻績氏は、1582年の武田氏滅亡の際、勝頼と共に自害したとされています。彼女の墓所は長野県長野市大岡地区天宗寺などにあります。

小説の影響

諏訪御料人は、武田信玄を題材とした小説やドラマに頻繁に登場しますが、その実名が不明であるため、作品ごとに異なる名前で呼ばれています。新田次郎の小説『武田信玄』では湖衣姫、井上靖の小説『風林火山』では由布姫という名前が用いられています。

彼女の人物像については、小説やドラマの影響が大きく、史実とは異なるイメージが形成されている面もあります。例えば、信玄が正室の三条の方と不仲で、諏訪御料人を溺愛したという説がありますが、これには根拠となる史料がありません。信玄が勝頼に武田家を継がせようとしたという説も、他の息子たちが家督を継ぐことができなかった結果と考えるべきでしょう。

登場作品

諏訪御料人を題材にした主な作品は以下の通りです。

映画
風林火山 - 由布姫（1969年、東宝、演：佐久間良子）
テレビドラマ
武田信玄 - 由布姫（1966年、よみうりテレビ、演：北林早苗）
天と地と - 諏訪御寮人（1969年、NHK大河ドラマ、演：中村玉緒）
風林火山 - 由布姫（1969年、NETテレビ、演：栗原小巻）
武田信玄 - 湖衣姫（1988年、NHK大河ドラマ、演：南野陽子）
武田信玄 - 珠々姫（1991年、TBS、演：宮崎萬純）
風林火山 - 由布姫（1992年、日本テレビ、演：古手川祐子）
風林火山 - 由布姫（2006年、テレビ朝日、演：加藤あい）
風林火山 - 由布姫（2007年、NHK大河ドラマ、演：柴本幸）
天と地と - 諏訪御前（のぶ）（2008年、テレビ朝日、演：水橋貴己）

その他

甲府市では、毎年4月8日に信玄公祭りの前夜祭として、舞鶴城公園で湖衣姫コンテスト（現在は由布姫コンテスト）が開催されています。

諏訪御料人は、戦国時代を生きた女性として、その生涯は多くの人々に語り継がれています。

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