御所柿

御所柿について

御所柿（ごしょがき）は、奈良県御所市を起源とする特異な柿の品種で、完全甘柿に分類されます。甘味のルーツとされるこの果物は、江戸時代の初期に大和国御所町で自然に甘くなる突然変異によって誕生しました。それ以前は主に渋柿が主流であったため、御所柿の登場は農業においても画期的な出来事でした。その味は「天然の羊羹」とも称され、幕府や宮中にも献上されるほどの超一級品とされています。

歴史

御所柿の存在は、創生された1645年（正保2年）頃から確認されています。松江重頼の俳諧論書『毛吹草』では「御所柿」が大和の名産として紹介され、1697年（元禄10年）の『本朝食鑑』ではその味わいが絶品だと称賛されています。1712年（正徳2年）の『和漢三才図会』では、御所柿がその外見的特徴や味の素晴らしさについて詳しく述べられ、1754年（宝暦4年）には平瀬徹齋の『日本山海名物図会』で「大和御所柿」が特良品として認識されています。

また、美濃国で富有柿が生まれる背景には、御所柿の接ぎ木があったと言われています。正岡子規は1901年に著した随筆「くだもの」の中で、御所柿を食べた際のエピソードを記しており、その瞬間に自然の美しさを感じたと伝えています。さらに、1928年には御所柿の栽培状況が詳細に記述された書籍が刊行され、昭和初期における栽培の盛衰が示されています。

特徴

御所柿は、一般的に150g前後の小ぶりな果実で、扁平な形状を持ち、果頂部はやや尖っています。糖度は17 - 20度と非常に高く、食感も粘り気があり極上の味わいを誇ります。枝に実る様子は時に不安定で、様々な環境要因によって生理落果を引き起こすことが多く、栽培には相当な技術が求められます。果実は熟すと外観が変化しやすく、そのために栽培者にとっては挑戦となります。

栽培

農業の重圧の中で、御所柿はかつては経済的に栽培されることが少なくなりました。しかし2006年からは地元の柿生産者が中心となり、再度栽培を活発化させようとする動きが出始め、接ぎ木による技術革新が続けられています。2009年から市場への出荷が開始され、2012年には約700kgの出荷を達成するなど、復活に向けての努力は実を結んでいます。この取り組みによって、古木も含めて奈良県には御所柿の栽培がまだ続いています。

御所柿は、栽培の継続と評価を受ける中で、今後もその素晴らしい固有の特性が引き継がれていくことでしょう。

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