御簾中

御簾中（ごれんじゅう）

御簾中とは、かつて日本において、身分の高い人物の正妻を敬意を込めて呼ぶ際に用いられた言葉です。特に江戸時代には、江戸幕府によってその使用が厳格に制限されるようになりました。

江戸時代以前

「御簾中」という言葉は、奈良時代以前には存在しませんでした。

平安時代中期以降、貴族社会においては、女性がみだりに男性に顔を見せるべきではないという習慣が定着し、簾や几帳を隔てて面会することが一般的になりました。この風習が、「御簾中」という言葉の語源になったと考えられています。しかし、平安時代の文献において、貴人の正妻を指して「御簾中」と記述した例は見当たりません。

戦国時代に入ると、戦国大名の夫人を「御簾中」と記述した文書が確認されるようになります。

江戸時代

江戸幕府は、大名統制の一環として、大名の正室の呼称にまで厳格なランク付けを行いました。将軍の正室を指す「御台所」という呼称は特に有名ですが、同様に格式の高い「御簾中」という呼称も、将軍の世子（後継者）と御三家の正室に対してのみ使用が許されました。ただし、後に徳川家斉の正室となった島津寧姫は、その立場が微妙であったためか、当初は「御縁女様」と呼ばれていました。

江戸時代中期に創設された御三卿は、御三家に準じる格式を与えられたため、その正室も「御簾中」と呼ばれました。王政復古の大号令によって徳川慶喜の将軍辞職が認められた際、幕府は慶喜の正室である省子（さわこ）の呼称を「御台所」から「御簾中」に改めるよう布告しました。

ちなみに、上記以外の一般の大名の正室は、10万石以上の石高を持つ大名の妻が「御前様」、それ以下の大名の妻は「奥方」と呼ばれていました。また、将軍の娘を正室として迎えた場合には、全く別の呼称が用いられ、夫の官位が従三位以上であれば「御守殿様」、正四位上以下であれば「御住居様（おすまいさま）」と呼ばれていました。

明治維新後の幕藩体制の崩壊に伴い、これらの呼称も使われなくなりました。

関連項目

徳川将軍家御台所
御守殿

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