徳川将軍家御台所

徳川将軍家御台所

徳川将軍家の御台所とは、江戸幕府将軍の正室に対する敬称です。大奥において特別な地位を占め、その存在は将軍家の権威と密接に結びついていました。本稿では、御台所の役割、大奥での生活、そしてその歴史的変遷について詳しく解説します。

御台所の立場

御台所は、大奥において将軍に次ぐ最高位の女性でした。原則として、摂家、世襲親王家、皇室出身の姫が迎えられる慣例となっていました。これは、御台所に求められる格式の高さを示すものです。ただし、11代将軍家斉の御台所・寔子や13代将軍家定の御台所・敬子のように、武家出身でありながら、摂家の養女となることで「摂家の姫」として迎えられた例もあります。

御台所は将軍の正室でありながら、将軍の生母となることは稀でした。これは、皇室や公家の外戚を持つ将軍の誕生を避けるため、大奥が管理していたためだと考えられています。しかし、実際には御台所が子を産んだ例もあり、この点は結果論的な側面も否定できません。

御台所は大奥の主宰者でしたが、江戸時代前期には、実権は御年寄や上臈[[御年寄]]といった老女、世継ぎを産んだ側室、将軍の生母や乳母などが握っていました。そのため、御台所が本来の立場を維持できた例は少ないとされています。しかし、6代将軍家宣の時代に改革が行われ、側室の住居は「長局向」に限定され、御台所は側室の子の嫡母として扱われるようになり、その地位は大きく向上しました。生母の地位は将軍家内で最も低く、御台所の権威を揺るがすことはありませんでした。

将軍が亡くなると、御台所は落飾して西丸に移り、余生を過ごすのが通例でした。しかし、時代によっては多大な影響力を保持し続けた例もあります。また、正室であっても、立場や大奥入りしなかったために御台所と称されなかった例もあります。例えば、3代将軍家光の正室・鷹司孝子は家光と不仲だったため、大奥ではなく中之丸御殿に住み、「中の丸殿」と呼ばれました。

慶応3年（1867年）の王政復古の大号令により、徳川慶喜の将軍職辞任が認められ、それに伴い正室の省子への尊称が「御簾中」へ改められたことで、「御台所」という呼称は終焉を迎えました。

大奥での生活

御台所の住居は、大奥「御殿向」の北西にある「松御殿」または「新御殿」でした。居間として「御上段」「御下段」「御休息」が、寝所として「御切形の間」が用いられました。日常生活において、御台所が自ら手を動かすことはほとんどなく、食事、厠、爪切り、着替えなど、すべて女中が行いました。

食事は10人前用意され、そのうち2人前は毒見役が試食しました。毒見を通過した料理のうち、御台所が実際に口にするのはわずか2人前（各料理2箸分）で、残りは食事当番の女中たちが食べました。着替えは1日に5回行われ、入浴、朝食前、将軍への謁見前、昼食前、夕食前、就寝前と、それぞれ異なる装いをしていました。

御台所町

明暦3年（1657年）の明暦の大火後、江戸幕府の都市整備に伴い、神田明神の近くに御台所賄方の役人の屋敷が集められました。その後、明治2年（1869年）には神田明神下御台所町と呼ばれるようになりました。

徳川将軍家正室一覧

（※夫の将軍就任前に死去した場合はで表示）

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脚注

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関連項目

大奥
徳川将軍家
御簾中 - 御三家および御三卿の正室に用いられた敬称。

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