御三卿

御三卿（ごさんきょう）について

御三卿とは、江戸時代中期に設立された徳川将軍家の一部を形成する三つの家系の総称で、田安徳川家、一橋徳川家、清水徳川家から成り立っていました。これらの家系は、それぞれ将軍家の直系の血筋から派生したものであり、御三家の後援や継承者提供の役割を担っていました。御三卿は、将軍家に子がない場合の後継者を選定する重要な位置づけにあり、幕府成立以降、実質的には将軍家の一部としてカウントされながら、対外的な大名としての地位は持たなかったため、専ら将軍の庶子たちを待機させておく「部屋住み」という性格が強かったのです。

御三卿の起源と沿革

御三卿の成立は、1731年に第8代将軍徳川吉宗が、2人の息子である宗武と宗尹に江戸城内の屋敷を与えたことに起因します。この頃は「御両卿」と呼ばれていました。さらに、1759年に第9代将軍徳川家重が次男の重好へ屋敷を与えた際に、3つの家系としての形が整えられました。それ以降、将軍家に後嗣がない時には御三卿から適合者が選ばれてきました。実際、一橋家からは第11代将軍徳川家斉と第15代将軍徳川慶喜が出るなど、御三卿は将軍家の継承に重要な役割を果たしていました。

御三卿の政治的役割

御三卿は、主に将軍家の血統を保つための「預かり家」として存在していました。このため、一般的な大名に比べて独立性が非常に低く、幕府から支給される資金や家臣に依存していました。一部の歴史的文書には、御三卿が将軍家の庶子を待機させるために設けられたと記されています。幕末期にかけて、御三卿はその存在意義に変化があり、他の大名家との関わりが深まることになります。

家臣団と格式

御三卿の家臣団は、幕府から派遣された幕臣で構成されており、その中には御付人、御付切、御抱入という区分がありました。御付人は直接幕府から俸禄を受け取る立場で、上級役職のみを担い、御付切や御抱入は御三卿を介して俸禄を受け取ることになっていました。また、御三卿の当主は元服すると従三位に叙され、社交的にも将軍家の近い親族として位置付けられていました。

御三卿の廃藩と近代化

明治維新後、御三卿はそれぞれの家から独立し、近代国家の一部として再編成されました。田安家や一橋家は、維新後に藩としての自立を果たします。1884年には華族令が公布され、それぞれが伯爵に叙爵されるなど、従来の大名家としての役割から次第に近代的な貴族に移行していくのです。特に田安徳川家の当主である徳川家達は、徳川宗家の継承を受けることになり、近代日本において重要な役割を果たしました。

以上のように、御三卿は江戸時代における徳川将軍家の維持・継承にとって重要な役割を担い、明治維新を経て近代の華族へと変遷していった歴史深い家系です。

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