御薗大根

御薗大根（みそのだいこん）

御薗大根は、三重県伊勢市で大正時代から栽培されている白首系の大根です。三重県の伝統野菜の一つに数えられ、主に伊勢たくあんの材料として利用されています。

特徴

御薗大根は、宮重大根と練馬大根を交配させて生まれた品種とされています。一般的な大根と比較して、全体的に白く、細長い形状が特徴です。標準的なサイズは、直径約5cm、長さ約50cm、重さ約1.5kgで、葉は宮重大根に似ていますが、色がやや淡く、葉柄は緑がかった白色をしています。食物繊維が豊富で歯切れが良く、乾燥させると甘味が増す性質を持ちます。伊勢たくあんの原料としては、主に辛漬けに用いられ、早漬けや中漬けには別の品種が使用されます。

栽培

御薗大根の種まきは例年9月上旬に行われ、11月下旬から12月上旬にかけて収穫されます。生食用には10アールあたり4,500株、加工用には7,000〜9,000株が植えられます。かつては、生食用は畑で、加工用は水田で栽培され、生食用が売れ残った場合は加工用に回されていました。御薗大根は一般的な大根よりも長いため、収穫にはかなりの力が必要で、特に高齢の農家にとっては大きな負担となっています。

歴史

御薗大根の栽培は、大正時代に度会郡御薗村（現在の伊勢市御薗町）で始まりました。伊勢たくあんの商品化が進む中で、従来の青首系大根では漬け込むと黒ずんでしまうという問題がありました。そこで、白首系の大根への転換が求められ、宮重大根を母体とし、練馬大根や美濃早生と交配・選抜を重ね、「度会1号」が誕生し、それが御薗大根のルーツとなりました。昭和初期には、伊勢市周辺の広範囲で栽培されるようになり、太平洋戦争中には、保存食として伊勢たくあんが国に供出されました。終戦後の食糧難の時代には、保存のきく大根漬けが重宝され、御薗大根の生産農家が増加し、伊勢平野では大根を干すための稲架（はさ）が冬の風物詩となっていました。1960年代頃からは、畑の老朽化により、三重県多気郡明和町が主産地となり、現在では、御薗大根の競りは明和町で行われています。また、玉城町でも栽培されています。

近年では、様々な種類の大根が栽培されるようになり、御薗大根の生産農家は減少傾向にありましたが、伊勢たくあんの優良な発酵[[食品]]としての価値が見直されてきたことから、近年では生産が増加しています。三重県は、2006年に「御薗大根」を「みえ伝統野菜品目」として認定しました。

参考資料

伊勢市 編『伊勢市史』伊勢市役所、昭和43年3月31日、954p.
小川敏男『つけ物通』日本の食文化大系/第十七巻、東京書房社、昭和61年3月25日6版発行、226p.
経済産業省・特許庁『地域団体商標2009』経済産業省・特許庁、平成21年6月
「日本の食生活全集 三重」編集委員会 編『日本の食生活全集 24 聞き書 三重の食事』農山漁村文化協会、昭和62年4月15日、338p. ISBN 4-540-87001-7
農耕と園芸編集部 編『最新園芸特産地ガイド ②中部・近畿』誠文堂新光社、昭和47年7月20日、275p.
農山漁村文化協会 編『地域食材大百科 第2巻 野菜』農山漁村文化協会、2010年5月15日、549p. ISBN 978-4-540-09262-6

関連項目

伊勢たくあん

外部リンク

伝統野菜・地域野菜　御薗大根
* 東海農政局　2007年12月　第40号　水土里フォーラムかわら版

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