御袖天満宮

御袖天満宮：尾道の歴史と文化を語る神社

広島県尾道市に鎮座する御袖天満宮は、菅原道真公を祀る神社です。その歴史は古く、平安時代の延喜元年(901年)に創建されたと伝えられています。道真公が大宰府へ左遷される途中、尾道に立ち寄り、地元民の厚意に感謝し、自身の衣の袖を当地に遺したことが神社名の由来となっています。

創建と伝承：袖と麦酒の物語

創建の物語は、道真公が左遷の途中に尾道に上陸し、地元民から麦飯と醴酒（れいしゅ）をもてなされたことに端を発します。感謝の印として、道真公は自身の着物の袖を当地に残し、その袖が「御袖の御影」として祀られるようになりました。この逸話は、中国地方の瀬戸内海沿岸各地に伝わる道真公の寄泊伝説の一つです。しかし、御袖天満宮の創祀伝承には、道真公を接待したのは金屋という人物であったという記述もあり、この金屋家は江戸時代には尾道港の繁栄を背景に財を成し、神社の縁起に影響を与えた可能性も指摘されています。

近世から現代へ：信仰と変遷

近代社格制度では郷社に列せられた御袖天満宮は、明治の神仏分離までは大山寺という寺院の別当寺として管理されていました。現在でも大山寺は神社の境内に隣接しています。金屋家の没落や麦畑の荒廃など、時代の変遷の中で神社も様々な影響を受けながら、信仰を集め続けてきました。

天神祭：賑やかな祭事

7月中旬には「天神祭」が盛大に開催されます。神輿の巡幸や勧学祭、福引き、大道芸など、3日間にわたって多彩な行事が行われます。特に、最終日に行われる「勇壮五十五段大神輿還幸の儀」は、55段の石段を神輿が登り降りする壮観な光景として知られています。この石段は、境内への参道として使われており、その最後の1段だけがわざと継ぎ接ぎされているのが特徴です。

見どころ：歴史と文化が息づく境内

御袖天満宮の境内には、歴史を感じさせる建造物や史跡が多く残されています。本殿は入母屋造、拝殿は入母屋造で、神門は三間一戸切妻造の八脚門です。境内には、道真公が休憩したとされる腰掛石や、さすり牛などの史跡もあります。また、55段の石段は、映画『転校生』や連続テレビ小説『てっぱん』など、数々の映像作品にも登場しています。アニメ『かみちゅ！』の舞台となった来福神社も、御袖天満宮をモデルに設定されています。

アクセス：尾道駅から徒歩圏内

御袖天満宮へのアクセスは良好です。山陽本線尾道駅から徒歩20分、おのみちバス・中国バス「長江口」バス停から徒歩5分、千光寺山ロープウェイ山麓駅から徒歩5分と、様々な交通手段でアクセス可能です。

まとめ：尾道の魅力を凝縮した神社

御袖天満宮は、創建以来、数多くの歴史的出来事や人々の信仰と深く関わりながら、現在も尾道の街を見守る存在となっています。創建神話を始めとする興味深い歴史、賑やかな天神祭、そして美しい境内は、尾道を訪れた際にはぜひ訪れてみたい場所です。その歴史と文化に触れることで、尾道の魅力をより深く理解することができるでしょう。

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