御覧詩

『御覧詩』（ぎょらんし）は、中国唐代に勅撰された漢詩集であり、その選者は令狐楚（れいきょそ）です。この詩集は全1巻で構成され、別名として『唐歌詩（とうかし）』、『選進集（せんしんしゅう）』、『元和御覧（げんなぎょらん）』とも呼ばれています。

『御覧詩』が編纂されたのは元和年間（806年 - 820年）のことです。当時の皇帝であった憲宗（けんそう）の勅命を受け、令狐楚が詩を選びました。詩集の名前は、皇帝の御覧（ぎょらん、天覧ともいう。皇帝が内容を見ること）を経たことに由来します。つまり、「皇帝が御覧になった詩」という意味が込められているのです。

収録されている詩の多くは、近体詩（きんたいし）と呼ばれる形式の律詩（りっし）です。律詩は、唐代に完成された漢詩の形式の一つで、五言律詩（ごごんりっし）や七言律詩（しちごんりっし）などがあります。また、楽府（がふ）という古い歌謡の題材を用いた詩も含まれています。楽府は、漢代に設けられた音楽を司る役所の名であり、そこで歌われた歌謡を起源とする詩を指します。

『御覧詩』には、およそ30人の詩人による289首の詩が収録されています。これらの詩は、当時の社会や文化、人々の感情を反映したものであり、唐代の詩壇を知る上で貴重な資料となっています。

勅撰漢詩集は、皇帝の権威によって編纂された詩集であり、その時代の代表的な詩や、皇帝が好んだ詩が収録されることが一般的です。『御覧詩』もその例に漏れず、元和年間の詩壇の傾向や、憲宗の好みを知る手がかりとなります。また、令狐楚という人物がどのような基準で詩を選んだのか、という点も興味深い研究対象です。

『御覧詩』は、唐代の漢詩研究において重要な文献の一つであり、文学研究者や歴史研究者によって研究されています。また、漢詩に興味を持つ人々にとっても、唐代の詩の世界に触れるための入門書として読むことができます。この詩集を通じて、唐代の豊かな文化や、詩人たちの感性に触れてみてはいかがでしょうか。

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