徳光院

大円山徳光院：歴史と自然が織りなす静寂の空間

兵庫県神戸市中央区葺合町に位置する徳光院は、臨済宗天龍寺派に属する寺院です。山号は大円山、本尊は十一面観世音菩薩。明治時代に、神戸川崎財閥の創始者である川崎正蔵氏によって建立された歴史を持つ寺院であり、その静謐な境内は、多くの参拝客を魅了しています。

川崎正蔵と徳光院の創建

徳光院は、布引の滝の参道近くにあり、かつて修験道の大道場であった滝勝寺の跡地に建立されました。正蔵氏は晩年、京都嵯峨に別荘を構え、天龍寺派の僧侶と親交を深め、その影響を受けて徳光院の創建を思い立ったと言われています。1887年から1905年にかけて、私財を投じて建立された寺院は、夢窓国師の法灯を継承し、当時の天龍寺派管長であった高木龍淵禅師を開山として迎えました。1897年には、雲照律師から「徳光菩薩」の称号を授与された正蔵氏の篤い信仰心が、寺院の名前の由来にもなっています。

明治の建築と室町時代の遺構

明治時代に建立された徳光院ですが、境内には室町時代の多宝塔をはじめとする歴史的建造物が移築されています。松や楠の緑に囲まれた境内は、古都の趣を感じさせ、周辺の山々の景色とも見事に調和しています。この多宝塔は、国の重要文化財に指定されており、その精緻な造りは必見です。薬師如来像や持国天・増長天像といった貴重な仏像も安置されています。

その他にも、江戸時代初期建立の鐘楼（三木市の伽耶院から移築）、本堂、開山堂、山門など、歴史を感じさせる建築物が点在しています。これらの建物は、神戸市選定歴史的建造物にも指定されています。

禅と文化の交流

徳光院は、単なる寺院にとどまらず、禅の教えを伝える場としても機能しています。開山後間もなく、高木龍淵禅師の弟子である関精拙や野田文一郎らが中心となり、「遊龍会」という禅会が結成されました。神戸高商の学生なども参加し、毎月二回、提唱と参禅が行われていました。また、1939年頃からは、関精拙を中心とする「味道会」という禅会も発足し、現在も徳光院で続けられています。

徳光院と周辺環境

徳光院周辺には、五社稲荷大明神社、福徳弁財天社、筆塚などがあり、古碑も多く残されています。この布引山一帯は、神戸市により「徳光院及びその周辺文化環境保存区域」として指定され、環境保護とともに、市民憩いの場「徳光院市民公園」として整備されています。周辺には、布引の滝、布引ダム、布引ハーブ園などの観光スポットも点在し、自然豊かな環境の中で、歴史と文化に触れることができます。

年間行事

徳光院では、春彼岸会法要、盆施餓鬼法要、開山忌、秋彼岸会法要、弁財尊天大祭・筆供養など、年間を通して様々な法要や行事が行われています。これらの行事を通して、地域住民との交流を深め、寺院の文化を伝承しています。

アクセス

徳光院へのアクセスは、山陽新幹線新神戸駅から徒歩15分、または神戸市営地下鉄西神・山手線新神戸駅から徒歩15分です。JR神戸線三ノ宮駅から神戸市バスを利用することも可能です。

徳光院は、歴史、文化、自然が融合した貴重な場所です。静寂な境内の中で、時の流れを感じ、心の安らぎを求めることができるでしょう。

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