川崎正蔵

川崎正蔵：近代日本の礎を築いた実業家

川崎正蔵（1837年 - 1912年）は、幕末から明治にかけて活躍した日本の実業家、政治家であり、神戸川崎財閥の創始者として知られています。川崎造船所（現・川崎重工業）を創業し、日本の近代化に大きく貢献しました。また、美術蒐集家としても知られ、日本初の私立美術館である川崎美術館を建設するなど、文化面でも多大な功績を残しました。

生い立ちと初期の活動

天保8年（1837年）、薩摩国鹿児島城下（現在の鹿児島県鹿児島市）で呉服商の息子として生まれました。幼名は磯治。15歳頃から家業を助け、薩摩藩御用商人・浜崎太平次の経営する山木屋に奉公しました。17歳で山木屋の長崎支店に赴任し、藩命により金や米を扱う貿易業務に従事。長崎では、貿易、海運、造船などの事業を経営する訓練を受け、西洋型帆船から刺激を受けました。日中は中華街や出島のオランダ商館で輸出入業務に励み、夜は外国語を学ぶなど、国際的な視野を広げました。

文久3年（1863年）に大阪で自分の店を開業。鹿児島町吏、大坂の蔵屋敷用達を命ぜられ、貿易に着目して藩庁を説得。西洋型帆船を購入し、薩摩国産物を畿内に輸送して大きな利益を上げました。

造船事業への進出

明治維新後、明治4年（1871年）に上京。明治6年（1873年）には帝国郵便汽船会社の副社長となり、東京・琉球間の郵便航路開設に尽力しました。明治10年（1877年）には大阪に官糖取扱店を開き、琉球反物の運送販売で利益を上げ、念願の造船業を開始します。明治11年（1878年）に築地造船所、明治13年（1880年）には兵庫川崎造船所を開業しました。

明治19年（1886年）に官営兵庫造船所の払い下げを受け、明治20年（1887年）に川崎造船所（現・川崎重工業）を設立。日本の造船技術の発展に大きく貢献しました。

美術蒐集家としての顔

明治29年（1896年）に第一線を退いてからは、美術蒐集家として知られるようになりました。日本の美術品が海外に流出するのを憂い、明治11年（1878年）頃から美術品を収集。生涯で2000点以上の名品を買い求めました。明治18年（1885年）には神戸の本邸内に川崎美術館を建設し、収集品を一般公開しました。顔輝作「寒山拾得二幅対」や春日基光画「千手千眼観音」などの国宝級の作品を所蔵していました。

また、七宝焼の製作にも取り組み、尾張七宝焼の後継者である梶佐太郎一族を神戸に招き、七宝焼の工場を設立。パリ万国博覧会に出品し、名誉大賞を獲得するなど、日本の美術工芸の発展にも貢献しました。

親族と晩年

長男、次男、三男に先立たれ、四男に養子を迎えるも廃嫡。甥の川崎芳太郎を養子とし、川崎造船所の後継者としました。曾孫に小説家の久坂葉子がいます。

晩年は体調を崩し、全国各地の別荘で過ごしました。大正元年（1912年）12月2日、75歳で死去。日本の近代化に貢献した偉大な実業家、そして文化人として、その名は歴史に刻まれています。

栄典

1888年（明治21年）3月31日 - 従六位
1902年（明治35年）2月22日 - 勲五等瑞宝章
* 1912年（大正元年）12月2日 - 従五位

川崎正蔵は、日本の近代化を支えただけでなく、美術品の保護や文化の振興にも尽力した偉人です。彼の功績は、現代の日本にも大きな影響を与え続けています。

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