徳岡神泉

徳岡神泉 - 日本画の巨星

徳岡神泉（とくおか しんせん、1896年2月14日 - 1972年6月9日）は、京都市で生まれた著名な日本画家です。本名は時次郎であり、彼の画業は独特なスタイルにより「神泉様式」と呼ばれるようになりました。彼は幽玄で象徴的な表現を通じて、戦後の日本画界に多大な影響を与えました。また、その作品には繊細な地塗りが施されており、その技術も高く評価されています。

生涯と教育

神泉は1896年に上京区で誕生し、彼の芸術の才能は早くから開花しました。1909年には、土田麦僊の紹介で竹内栖鳳の画塾「竹杖会」に入塾し、本格的に絵画を学びます。次の年には、京都市立美術工芸学校へ進学し、在学中に金牌や銀牌を獲得。その卒業制作『寒汀』は学校によって買い上げられるという栄誉に浴しました。さらに京都市立絵画専門学校に進学するも、彼の道は順風満帆ではありませんでした。

当時の京都の画壇では、官展に入選することが画家としての第一歩とされていましたが、神泉はその期待を裏切るように落選を重ねます。1918年には自身の渾身の作品『魚市場』を出品しましたが、またもや落選し、大きなショックを受け、その後は孤独な日々を過ごすこととなります。この時期、妙心寺を訪れるなど精神的な落ち着きを求めていました。

芸術の再出発

神泉は1919年に日本無名展で『雲の流れ』を出品し、褒章を受けましたが、まだ自信を完全には取り戻せない状況でした。その後、彼は富士山麓の岩淵に逃避し、ここで「俊成」という号を名乗るようになります。そして1920年に結婚したのを契機に、彼の号は「神泉」に変更され、その名は風景名に由来しています。

1925年の第6回帝展では、約12年の時を経て『罌粟（けし）』が初めて入選します。これを機に彼の作品は次々と評価されるようになり、1930年には無鑑査の資格を取得しました。しかし、神泉本人はその成功をあまり喜ばず、「入選してから絵らしい絵を描くようになった」と後に振り返っています。

独自スタイルの確立

1938年には新文展の審査委員を務め、1947年には『赤松』を発表し、これが神泉様式の確立をもたらす重要な作品となります。この頃から彼の作品は、伝統的な日本画のあり方を問い直すような表現を見せ、観る者に深い印象を与えるようになりました。特に、この作品からは彼の繊細な地塗り技術が顕著に見られるようになります。

1951年には『鯉』で日本[[芸術院]]賞を受賞し、さらに1957年には日本[[芸術院]]の会員となります。1961年に発表した代表作『仔鹿』では、単純化されたフォルムと重厚感あふれる幽玄な雰囲気を持つ作品として評価され、神泉様式の一つの到達点を示しています。

最晩年と遺産

1966年に文化勲章を受章した神泉でしたが、その後は体調を崩し始めていました。1971年には健康状態が悪化し、思うように画業を続けることができなくなりました。そして1972年6月9日、腎不全による尿毒症で76年の生涯を終えました。その際、従三位の銀杯を賜ったことは彼の業績の証でもあります。

主な作品

• - 『狂女』（1919年頃、東京国立近代美術館）
• - 『椿』（1922年頃、同上）
• - 『後苑雨後』（1927年、京都国立近代美術館）
• - 『菖蒲』（1939年、東京国立近代美術館）
• - 『赤松』（1947年、同上）
• - 『仔鹿』（1961年、同上）

神泉の名前は、今なお日本画界で深く記憶され続けています。彼の作品に込められた深い精神世界と、新たな表現の探求は、後世の画家たちにとっても貴重な指針となることでしょう。

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