徳川家康 (山岡荘八)

『徳川家康』は山岡荘八によって執筆された大河歴史小説で、その連載は1950年から1967年にかけて行われました。最初は北海道新聞に連載が始まり、後に中日新聞や神戸新聞にも広がった本作は、徳川家康の生母である於大の方の縁談から、家康が亡くなるまでの70年以上の歴史を詳細に描いています。1972年には第2回吉川英治文学賞を受賞し、単行本は1953年にシリーズ第一巻から第五巻までが同時に出版された他、1967年には最終巻の第26巻が刊行されました。

この作品は、合計17,400枚の原稿用紙を必要とし、当時は「世界最長の小説」としてギネスブックにも認定されました。特にその長さにおいては、マルセル・プルーストの『失われた時を求めて』やジュール・ロマンの『善意の人々』と並ぶ存在として認知されています。山岡は第二次世界大戦中に特攻隊員の取材を行った経験があり、その際に抱いた日本の存続への願いと世界平和への祈りを、本作の中で徳川家康の「泰平」の志と合わせて表現しています。また、連載後のあとがきは、特攻隊員を祀る「空中観音」の小堂で書かれたとされています。

連載が始まる前の段階で、家康の祖先である松平家が織田家と今川家の狭間で苦しむ姿は、当時の日本の状態と重なり、多くの読者から共感を得ました。家康に対するそのイメージは、戦のない世を作るために努力する姿勢や、豊臣秀頼を助けようとする誠実さに重点を置いており、これが家康の過去の「狸親父」の印象を打破することにつながりました。

本作は単なる歴史小説の枠にとどまらず、経営やリーダーシップに関する教訓を得られるビジネス書としても評判で、多くの著名人から支持されました。例えば、ジャイアント馬場や落合博満など、さまざまな分野の人々によって読まれています。さらに、韓国や中国でも翻訳され、多くの世代にわたって愛される作品となっています。

各巻は家康の人生の様々な局面を描写し、彼自身やその周囲の人物が直面した試練や成長を浮き彫りにしています。歴史的事実を追う中で、戦国時代という激動の時代を通じて、家康が如何にして平和な世を築こうとしたのか、その独特の視点が、新たな理解を深めてくれます。そして、本作に登場する多くのキャラクターたちも、歴史の中で重要な役割を果たしており、読者は家康や彼を取り巻く人々の人間ドラマに胸を打たれることでしょう。

このように『徳川家康』は、歴史に対する新たな視点を提供する重要な作品であり、今もなお多くの人々に読まれ続けているのです。

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