徳川敦之助

徳川敦之助は、寛政8年3月19日（1796年4月26日）に、江戸城本丸で誕生しました。父は第11代将軍徳川家斉、母は御台所である近衛寔子です。敦之助は、家斉にとって五男にあたり、誕生時には松平の称号を与えられ、松平敦之助と称されました。

敦之助の誕生は、将軍家にとって特別な出来事でした。御台所が男子を出産したのは、2代将軍徳川秀忠の正室であるお江与（崇源院）以来のことであり、その喜びは家斉夫妻のみならず、祖父である徳川治済や外祖父の島津重豪にも及びました。しかし、その3年前には側室のお楽が産んだ敏次郎（後の第12代将軍・家慶）が将軍家の世子と定められており、敦之助が将軍位を継ぐことはありませんでした。

寛政10年（1798年）7月17日、敦之助は清水徳川家を継ぐことになります。清水家は、御三卿の一つであり、徳川将軍家の一門の中でも重要な家柄でした。しかし、敦之助はわずか4歳であったため、その家督を継いだ後も幼少の身で過ごすことになります。

敦之助は、清水家を継いでから約1年後の寛政11年（1799年）5月7日に、わずか4歳でこの世を去りました。その短い生涯は、将軍家や外戚に大きな悲しみをもたらしました。法名は体門院殿真際彰善大童子とされ、上野の凌雲院に葬られました。

敦之助の死後、清水家は一時的に空位となりますが、文化2年（1805年）8月1日、敦之助の弟である斉順が清水家を継ぎ、家督は再び徳川家の一員に引き継がれました。

敦之助の生涯は、その短さにもかかわらず、将軍家や御三卿といった江戸幕府の中枢における血縁関係の複雑さを物語っています。御台所の子として生まれ、御三卿の家督を継ぎながらも、若くして亡くなった彼の存在は、歴史の中に埋もれがちですが、徳川家の歴史を語る上で重要な一端を担っています。

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