清水徳川家

清水徳川家：将軍家の傍系として歩んだ歴史

清水徳川家は、徳川将軍家の分家筋である御三卿の一つとして、江戸時代から明治時代にかけて存在した家系です。御三卿とは、将軍家の血筋を引く傍系の家であり、将軍家が断絶した場合には、後継ぎとなる資格を持っていました。しかし、清水徳川家から将軍家を継いだ人物はいませんでした。

家格と所領

清水徳川家の家格は御三家に次ぎ、石高は10万石と、大きな勢力を有していました。家名は、江戸城清水門内（現在の北の丸公園・日本武道館付近）にあった屋敷に由来します。明治維新後は、東京都新宿区西早稲田にあった甘泉園を邸宅としていました。

御三卿としての特殊性

御三卿は、将軍家（徳川宗家）の家族、いわば「部屋住み」のような存在でした。そのため、独立した藩を領有しておらず、領地は幕府領から名目的に割り当てられていたに過ぎません。家臣団も、旗本や当主生家の家中など、少人数の出向者で構成されていました。これは、他の御三卿である田安家や一橋家と共通する特徴です。

代々の当主と家系の変遷

清水徳川家の初代当主は、9代将軍徳川家重の次男である重好でした。重好以降、実子による相続が一度もなく、将軍の弟や世子の弟が当主となるケースが続きました。また、当主が他の徳川家を継承することによって、一時的に家督が断絶する事例も度々発生しました。このため、御三卿の中でも、最も当主交代が激しかった家系と言えるでしょう。

特に、初代重好の死後、しばらく当主不在の時期がありました。その後、11代将軍徳川家斉の息子たちが当主として迎えられましたが、彼らは若くして亡くなったり、紀伊徳川家を継承したりと、短命に終わるケースが多くありました。そのため、弘化3年（1846年）から安政5年（1858年）頃まで、長らく当主不在の時期が続きました。

幕末には、15代将軍徳川慶喜の弟である昭武が当主となりました。昭武は、パリ万国博覧会の使節としてフランスに渡航し、外交に尽力しました。しかし、帰国後には水戸徳川家の家督を継承することになり、清水徳川家は再び当主不在となりました。

明治時代以降も、清水徳川家は存続しました。昭武の甥にあたる篤守が当主となり、華族に列せられました。しかし、篤守は爵位を返上し、その後、息子の好敏が男爵を授けられました。好敏は陸軍中将にまで昇進するなど、軍人として活躍しました。

清水徳川家の特徴

清水徳川家は、将軍家の傍系として、独自の藩を持たないなど、他の大名家とは異なる特殊な存在でした。しかし、その家系は、将軍家の血筋を受け継ぎ、江戸時代から明治時代にかけて、日本の歴史に重要な役割を果たしました。当主の交代が激しかったこと、将軍家の後継ぎとなる可能性があったこと、そして、外交や軍事に貢献した人物を輩出したことなどが、清水徳川家の歴史における特徴と言えるでしょう。

参考文献

藤田英昭 著「田安徳川家・一橋徳川家・清水徳川家」、竹内誠 編『徳川幕府事典』東京堂出版、2003年
小田部雄次『華族 近代日本貴族の虚像と実像』中央公論新社、2006年
* 松田敬之『〈華族爵位〉請願人名辞典』吉川弘文館、2015年

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