徳川治

徳川治（とくがわ おさむ）

徳川治は、1896年（明治29年）10月29日に、紀州徳川家第15代当主である徳川頼倫の三男として、東京府東京市麻布区飯倉町（現在の東京都港区麻布台）で生を受けました。兄には頼貞、宣方がいましたが、次兄の宣方は夭折したため、治は頼貞にとって唯一の弟として、深い愛情を受けて育ちました。

生涯

学習院に入学後、治は兄の頼貞と共に中島力造の家に寄宿していましたが、この状況は家職一同の反対を受け、母である久子も快く思っていませんでした。そのため、中島邸から麻布我善坊町（現在の麻布台）の新邸へと移ることになりました。この際、慶應義塾の玉井房之輔が同居し、兄弟の監督役を務めることになりましたが、治と頼貞は玉井に反発し、不平不満を漏らすなど、家職の鎌田栄吉や上田貞次郎らを困らせたと言われています。

1913年（大正2年）2月27日、治は学習院の馬場において乗馬の練習中、頭上を低空飛行していた陸軍飛行機の爆音に驚いた馬に振り落とされ、頭部を強く打ちました。一時絶息したものの、その後蘇生し意識も回復したため、容態は順調に回復しているかのように見えました。しかし、容態が急変し、3月1日深夜に目白の学習院の病室で、わずか16歳という若さでこの世を去りました。葬儀は寛永寺で執り行われ、学習院は治の死を悼み、300人の学生全員が参列しました。また、陸軍省も軍楽隊を派遣し、弔意を示しました。墓所は寛永寺真如院と、長保寺にある和歌山藩主徳川家の墓所です。戒名は蒼空院殿。同年10月には、追悼文集『葵廼雫』が刊行され、その死を悼む声が数多く寄せられました。

家族構成

父：徳川頼倫
母：徳川久子（徳川茂承の長女）
兄：徳川頼貞
兄：徳川宣方

参考文献

斎藤勇見彦編『葵廼雫』斎藤勇見彦、1913年。doi:10.11501/951806
内村義城編『紀伊南龍公』木国史談会、1914年。doi:10.11501/950730
徳川頼貞『薈庭楽話』春陽堂書店、1943年。doi:10.11501/1871569
上田貞次郎『上田貞次郎日記（壮年篇 明治38-大正7年）』上田貞次郎日記刊行会、1964年。doi:10.11501/2987232

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