徳川頼倫

徳川頼倫

徳川頼倫（とくがわ よりみち）は、明治から大正にかけて活躍した日本の政治家、実業家であり、紀州徳川家第15代当主です。1872年に田安徳川家当主・徳川慶頼の六男として生まれ、後に紀州徳川家の養子となりました。その生涯は、日本の近代化を支え、文化の発展に寄与したものでした。

生涯

幼少期を東京で過ごした後、紀州徳川家の養子となり、頼倫と改名しました。学習院に入学しますが中退。その後は山井幹六の養成塾で学び、三宅米吉や津田梅子、アーサー・ロイド、ウィリアム・リスカムらから漢学と英語を学びました。

1896年、イギリスのケンブリッジ大学に留学し、政治学を専攻しました。留学中には、南方熊楠の案内で大英博物館を見学したり、孫文と出会うなど、国際的な視野を広げました。1898年に帰国後、日本の政界・財界で活躍しました。

1902年には、東京に南葵文庫を設立し、貴重な古書の散逸を防ぎました。また、1911年には南葵育英会を設立し、和歌山県出身の学生への奨学金貸与や学生寮の提供など、人材育成に力を注ぎました。

1906年に紀州徳川家を相続し、貴族院議員に就任。貴族院仮議長や宗秩寮総裁、日本図書館協会総裁など、多くの要職を歴任しました。また、史蹟名勝天然紀念物保存協会会長として、文化財の保護にも尽力しました。

晩年は狭心症に苦しみ、1925年に52歳で亡くなりました。死後、その功績を称えられ、勲一等瑞宝章を受章し、正二位に叙されました。

人物

徳川頼倫は、乗馬や剣道、柔道に通じる武道家である一方、書籍を愛し、南葵文庫を設立するなど文化人としての側面も持ち合わせていました。欧州視察で感銘を受けた公共図書館思想の普及に日本図書館協会総裁として尽力しました。また、尊皇の念が強く、聖徳太子奉賛会会長を務めるなど、聖徳太子の顕彰事業にも参加しました。

留学中に見聞した欧州貴族の文化活動に感銘を受け、帰国後は華族として日本の文化活動を積極的に推進し、東京地学協会会長、海軍協会会長、日本弘道会副会長、明治神宮奉賛会幹事などを務めています。

文化財保護への貢献

徳川頼倫は、日本の文化財保護に大きな足跡を残しました。史蹟名勝天然紀念物保存協会の設立や、史蹟名勝天然紀念物保存法の制定に貢献。また、平城宮跡の保存運動を推進した奈良大極殿址保存会の会長にも就任しました。

南方熊楠との親交も深く、南方植物研究所の設立を支援するなど、研究活動の支援も行いました。

栄典

徳川頼倫は、その功績により、数多くの栄典を授与されました。勲一等瑞宝章をはじめ、数々の勲章や褒章を受けています。

系譜

徳川頼倫は、田安徳川家と紀州徳川家という、徳川家の中でも重要な家系の血を引いています。実父は田安徳川家当主・徳川慶頼、養父は紀州徳川家当主・徳川茂承です。兄弟には、徳川宗家を継いだ徳川家達がいます。

まとめ

徳川頼倫は、日本の近代化と文化の発展に貢献した偉人です。政治家、実業家、文化人として多岐にわたる分野で活躍し、その功績は今日でも高く評価されています。特に、文化財保護や人材育成に尽力したことは、後世に大きな影響を与えています。

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