徳政相論

徳政相論について

徳政相論（とくせいそうろん）は、平安時代初期の808年（延暦24年）に桓武天皇が発起した重要な政策論争です。この議論は、天皇の治世下での国政の方向性を定めるものであり、特に「天下の徳政」と呼ばれる概念に焦点を当てています。

経緯

延暦24年12月7日、桓武天皇は中納言藤原内麻呂に命じ、殿中において2人の参議、藤原緒嗣と菅野真道に対して相論を行わせました。緒嗣は当時32歳の若手参議で、軍事行動と都市建設が国民の負担となっていると考え、これらを停止すべきだと主張しました。彼は「現代、民の苦悩は軍事と造作に起因しており、これを止めれば百姓は安らぐだろう」と力強く訴えました。

対して、65歳の真道は生来頑固な性格で、緒嗣の意見には耳を傾けず、反対意見を繰り返しました。真道は桓武天皇からの厚い信任を受けた腹心で、渡来系氏族の出身であり、真道自身の立場を守ることに固執しました。二人の対立する主張は、まさに桓武天皇の政治的決断を問うものとなりました。

最終的に、桓武天皇は緒嗣の意見を取り入れることに決め、蝦夷征討と平安京の造都を停止することを決定しました。この判断は、天皇の国民に対する思いやりを示すものであったと同時に、政策の進路を大きく転換させるものでした。『日本後紀』の編者は、この決定を評価し、天皇が緒嗣の議を聴いて感銘を受けたと記しています。

相論後の影響

相論からわずか3ヶ月後、桓武天皇は70歳で崩御しました。これに伴い、政治の舵取りが大きく変わることとなりました。菅野真道は『続日本紀』の編者の一人として評価されており、藤原緒嗣は『日本後紀』の中心的な編者として知られています。『日本後紀』では、桓武天皇の治世が「内政と外敵防御に専念し、国を良く成長させた」と高く評価されています。

また、相論の席には征夷大将軍の坂上田村麻呂も参加していたとされており、彼は延暦23年に征夷大将軍に任命されましたが、この徳政相論により、彼の管轄する第四次蝦夷征討は中止されることになりました。

終わりに

徳政相論は、平安時代の政治において重要な意味を持つ議論でした。権力者の決定が民衆の生活にどれほど影響を及ぼすかを示す契機となり、また国の政策は時として一人の意見によって変わり得ることを教えてくれます。この論争は、当時の政治風景を理解する上で欠かせない重要な歴史的事件です。

参考文献

• - [高橋崇]]『坂上田村麻呂』🤍吉川弘文館]
• - [高橋崇『坂上田村麻呂 新稿版』🤍[[吉川弘文館]
• - 樋口知志『阿弖流為 夷俘と号すること莫かるべし』🤍[ミネルヴァ書房]

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