菅野真道

菅野真道（すがの の まみち）は、天平13年（741年）に生まれ、弘仁5年（814年）に没した、奈良時代から平安時代初期にかけての公卿です。津山守を父に持ち、出自は百済からの渡来人である王辰爾の後裔とされています。当初は津連の姓を名乗っていましたが、後に菅野朝臣に改姓しました。

真道は、光仁天皇の時代に少内記として官界に入り、桓武天皇の時代には外従五位下に叙せられました。その後、右衛士少尉、大尉、左兵衛佐などの武官や、近江少目、大掾、摂津介といった地方官を歴任し、幅広い官職経験を積みました。延暦4年（785年）には、安殿親王（後の平城天皇）の立太子に伴い、内位の従五位下に叙せられ、東宮学士に任命されました。延暦9年（790年）には、居住地に因んで菅野朝臣の姓を賜与されています。

桓武天皇の信任が厚く、東宮学士の傍ら、左大弁、左兵衛督、左衛士督など文武両道の要職を歴任しました。また、造宮亮として平安京遷都事業にも深く関与しました。官位も順調に昇進し、延暦24年（805年）には参議として公卿の仲間入りを果たしました。同年には、藤原緒嗣との間で、いわゆる「徳政相論」を行い、農民の負担軽減のために軍事・造作を停止すべきとの緒嗣の主張に反対しましたが、桓武天皇は緒嗣の主張を採用し、蝦夷征伐と平安宮造営の中止が決定しました。

平城天皇の即位に際して、正四位上に昇叙され、その後、観察使制度が導入されると、山陰道観察使、東海道観察使を歴任しました。嵯峨天皇の時代には、参議を辞任し、弘仁5年（814年）に74歳でこの世を去りました。最終官位は常陸守従三位です。

真道は、藤原継縄や秋篠安人とともに『続日本紀』の編纂に携わり、延暦16年（797年）に全40巻を完成させました。また、桓武天皇の命により、藤原内麻呂とともに格式の編纂にも着手しましたが、これは未完に終わりました。

官歴

宝亀9年（778年）：少内記
宝亀11年（780年）：近江少目
延暦元年（782年）：右衛士少尉
延暦2年（783年）：外従五位下、近江大掾、左衛士少尉
延暦3年（784年）：右衛士大尉、左兵衛佐
延暦4年（785年）：従五位下、東宮学士
延暦7年（788年）：伊予介、図書助
延暦8年（789年）：従五位上、図書頭
延暦9年（790年）：伊予守、菅野朝臣に改姓
延暦10年（791年）：治部少輔、正五位下
延暦11年（792年）：治部大輔、民部大輔
延暦13年（794年）：正五位上、従四位下
延暦14年（795年）：左兵衛督
延暦15年（796年）：造宮亮
延暦16年（797年）：伊予守、正四位下、左大弁、勘解由長官
延暦17年（798年）：左衛士督
延暦20年（801年）：相模守
延暦22年（803年）：但馬守
延暦24年（805年）：参議
延暦25年（806年）：大宰大弐、正四位上
大同2年（807年）：山陰道観察使、刑部卿、民部卿
大同3年（808年）：左大弁、大蔵卿
大同4年（809年）：従三位、東海道観察使、宮内卿、大蔵卿
大同5年（810年）：近江守、参議、常陸守宮内卿
弘仁2年（811年）：参議を致仕
弘仁5年（814年）：薨去（常陸守従三位）

系譜

父：津山守
母：不詳
妻：秦蓑丸の娘
男子：菅野高世（歌人）、菅野永岑
女子：菅野人数（尚蔵）、藤原山人室

参考文献

宇治谷孟『続日本紀（下）全現代語訳』講談社〈講談社学術文庫〉、1995年。ISBN 4061590324。
森田悌『日本後紀 上中下巻』講談社〈講談社学術文庫〉、2006年。
『公卿補任 第一篇』吉川弘文館、1965年1月1日。ISBN 9784642000284。

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