徳道

徳道の生涯と功績

徳道（とくどう）は、奈良時代に生きた伝説的な僧侶で、615年に播磨国揖保郡矢田部、執行（兵庫県）で誕生しました。彼は有力な豪族の家系に生まれ、父母を失った後、大和国の長谷寺にて修行を重ねました。使われた俗姓は辛矢田部米麻呂です。徳道の美しい容貌と聡明な眼差しは周囲の人々に強い印象を与えたと伝えられています。

修行と出家

徳道は長谷寺で道明大徳のもとで約10年間修行し、やがて信仰心とともに智恵を兼ね備えた名僧となりました。別の伝説では、彼は東大寺の良弁の弟子となり、その後出家して沙弥となったとも言われています。

冥界の経験

養老2年（718年）の春、徳道は急病にかかり、仮死状態に陥ります。その時、彼は冥土で閻魔大王と出会い、地獄に送られないために観音菩薩の慈悲を説くよう命じられました。徳道はその時を通じて「宝印」と呼ばれる通行証を授かり、現世に戻されました。彼はこの証拠をもとに、観音信仰を広めることに努めたのです。

観音霊場の設立

徳道は、西国の33か所に観音霊場を設ける計画を持っていましたが、当初は人々の支持を得ることができませんでした。それでも、徳道は信仰の流行を待つため、宝印を中山寺の石櫃に納めました。後の時代、寛和の変で退位して仏門に入った花山天皇がその話を聞き取り、988年に宝印を取り出し、再び観音巡礼の道が開かれるきっかけとなりました。

長谷寺の創建と影響

長谷寺の寺伝『長谷寺縁起文』によると、徳道は聖武天皇の勅命を受けて、近江国高島郡から持ち込まれた霊木を用いて新たな十一面観音像を制作しました。これが新しい長谷寺の本尊となり、さらに彼は鎌倉など各地に四十九ヶ所の寺院を設立しました。

晩年と退去

天平7年（735年）、彼は長谷寺の麓に草庵を建立し、そこで最後の時を過ごしました。最晩年には、草庵の松に登り、法起菩薩となり去ったとされており、法起院の名称もここに由来しています。

徳道は、観音信仰を根付かせた先駆者としての存在感を持ち、その業績は長く人々に語り継がれています。彼の人生は、信仰と慈悲心の重要性を教えるものとして、多くの人々に影響を与えています。

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