必殺! 主水死す

『必殺! 主水死す』は、1996年に公開された映画で、中村主水シリーズの一つの区切りとなる作品です。監督は貞永方久が務めました。

あらすじ

物語は、年老いた中村主水が、かつての情婦であるおけいとの関係も上手くいかない様子から始まります。そんな折、主水は葛飾北斎の遺体を発見。奉行所は事件性がないと判断しますが、北斎と関わりのあった彫師や摺師も謎の死を遂げていることから、北斎の娘・お栄は主水に下手人捜しを依頼します。手がかりは、北斎が最後に描いたと思われる似顔絵でした。

一方、おけいは武家の跡目争いに絡んだ仕事を引き受けてきます。それは、世継ぎの双子の弟を捜し出して殺害するというものでしたが、主水たちは筋の通らない依頼を拒否します。

そんな中、主水は似顔絵に描かれた人物に似た大道芸人の少年・捨蔵を見つけます。捨蔵と義母のお夢が暮らす家を訪れた主水は、捨蔵が実は女性であり、お夢が20年前に別れた仲間・お千代であることを知ります。お千代は過去の傷が原因で記憶を失っていました。

そこへ、おけい配下の仕事人たちが現れ、捨蔵を狙います。主水は彼らを制止し、おけいを説得しますが、そこに現れたのは、お千代の夫であり、主水の昔の仲間だった清吉、今の権の四郎でした。彼は大奥で権勢を振るい、捨蔵の命を狙っていました。

実は、捨蔵は将軍の世継ぎ争いの鍵を握る人物だったのです。お美津の方と水野忠邦、それぞれの思惑が交錯し、捨蔵を巡る陰謀が渦巻いていました。北斎の描いた似顔絵も、捨蔵を捜すためのものであり、北斎自身もそのために命を落としたのでした。

20年ぶりに再会した主水、お千代、権の四郎。権の四郎は、清太が主水の息子と思い込み、歪んだ愛情から主水に罠を仕掛けます。その結果、意外な悲劇が訪れるのでした。

キャスト

中村主水：藤田まこと
飾り職人の秀：三田村邦彦
三味線屋の勇次：中条きよし
おけい：東ちづる
お夢（お千代）：名取裕子
権の四郎（清吉）：津川雅彦
捨蔵 / 徳川家定：細川ふみえ
水野忠邦：宝田明
葛飾北斎：鈴木清順

スタッフ

監督：貞永方久
脚本：吉田剛
音楽：平尾昌晃、長部正和、渡辺邦孝

本作は、主水シリーズの完結編として、過去の因縁や複雑な人間関係が描かれた異色作です。特に、お千代を巡る主水と権の四郎の対立は、従来のシリーズとは異なるドラマチックな展開を見せています。ラストシーンは、主水の死を暗示するものであり、多くのファンに衝撃を与えました。しかし、その後のシリーズ作品で主水は再び登場し、本作での出来事がどのように解釈されるのか、議論を呼んでいます。

主題歌は葛城ユキが歌う「哀しみは花びらにのせて」で、シリーズ劇場版としては初のオリジナル主題歌となっています。

撮影は京都だけでなく松竹大船撮影所でも行われました。撮影のメイキング本も発売されています。

EDの背景はTVシリーズのEDと同じ場所で撮影されているなど、ファンには嬉しい演出も施されています。

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