必殺渡し人

『必殺渡し人』 概要

『必殺渡し人』は、1983年7月8日から10月14日まで、テレビ朝日系で放送されたテレビ時代劇です。この作品は必殺シリーズの第20作であり、全13話で構成されています。

本作は『新 必殺からくり人』以降、旅行物が続いていた中で久しぶりに江戸を舞台とし、主人公たちの日常生活を重視しています。惣太とお直の夫婦、そして大吉とお沢の夫婦の愛情を中心に展開され、長屋での人間関係が物語の一つのテーマになっています。

作中では、登場人物たちが直面する悪事は、金銭や利権を狙うものではなく、快楽目的のものが目立ちます。手篭めや夫婦交換、さらにSM趣味に関わる事件が多く描かれ、他のシリーズに比べると性描写が多く含まれている点も特徴的です。

主なキャストとしては、中村雅俊、高峰三枝子、藤山直美が新たに参加し、さらに過去の作品に出演した渡辺篤史や西崎みどりも登場しています。

音楽について

音楽は平尾昌晃が担当した主題歌が特徴で、新たに作曲されたのは主題歌のみです。劇中のBGMはほとんどが旧作からの流用で、新 BGMは中村啓二郎が制作しました。出陣や殺しの場面では、主題歌「瞬間の愛」のアレンジが使用されたほか、第5話以降は別のBGMに変更されています。

あらすじ

物語は、江戸の下町にある長屋が舞台です。ある夜、鏡研ぎ職人の惣太は、長屋の大家で蘭方医の鳴瀧忍が、無法者に襲われるところを目撃しますが、忍はその男を巧みに返り討ちにしてしまいます。

翌日、若い女性のお沢が忍の診療所に訪れ、堕胎手術を願い出ます。実はお沢は大目付の水野の女中で、息子に妊娠させられてしまったのです。忍は手術を拒否しますが、大吉が彼女を受け入れることを決め、大喜びで結婚します。

ところが、これを知った水野は、お沢を捕まえるために手を回し、結果的にお沢は拷問を受け流産し、記憶を失ってしまいます。また、巻き添えで大吉の母も重傷を負い、それが引き金となって彼女は死亡。失意の大吉は復讐を誓いますが、隣人の惣太に止められます。

惣太は自身の経験をもとに、大吉と共に忍に相談し、彼らは「渡し人」として弱者の復讐に立ち上がります。忍は昔の渡し人としての顔を見せ、二人は共に敵に立ち向かうことを決意します。

登場人物

• - 惣太（演：中村雅俊）

鏡研ぎ職人であり、かつては「鏡」として知られる凄腕の渡し人。裏稼業から離れた後も家族を思いやる姿勢を持つ。

• - 大吉（演：渡辺篤史）

人足で怪力を持つ優しい性格の男。お沢を妻に迎えるが、復讐心から渡し人となる。

• - お沢（演：西崎みどり）

大目付の女中だったが、運命の波に翻弄されつつも強く生きる女性。

• - 鳴瀧忍（演：高峰三枝子）

蘭方医であり、かつては恐れられた渡し人。優しい一面と復讐心を持ち合わせる人物。

• - お直（演：藤山直美）

惣太の妻であり、江戸の日常を元気に生きる女性。

物語は、キャラクターたちの絆と裏切りの中で進み、強者が弱者をいじめる中での復讐劇が描かれます。

制作スタッフ

• - 制作：朝日放送、松竹
• - 脚本：吉田剛ら
• - 音楽：平尾昌晃
• - 監督：田中徳三ほか

『必殺渡し人』は、必殺シリーズの中でも特に人間ドラマが濃厚に描かれており、強者に立ち向かう弱者の姿を描いた傑作と言えるでしょう。

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