忍壁皇子

忍壁皇子（おさかべ の みこ）

忍壁皇子は、天武天皇の皇子であり、古代日本の歴史において著名な人物です。彼は特に大宝律令の編纂において中心的な役割を果たし、政治家としても重要な地位を持ちました。

経歴

天武天皇元年（672年）の壬申の乱において、父である天武天皇が吉野から東国へ向かう際、忍壁皇子は草壁皇子と共に天皇に付き従って名を挙げられました。彼の政治的活動は、以下のような事件を通じて広がりを見せます。

• - 674年: 忍壁皇子は石上神宮に派遣され、神宝の武器を膏油で磨く作業を行いました。この日、石上神宮の神府が皇室の武器庫とされ、宝物を各家の子孫に返還するようにとの勅令が出されたことが記されています。

• - 679年: 天智、天武両天皇の諸皇子と共に吉野宮に集まり、戦渦を起こさないことを誓約したことから「吉野の盟約」と呼ばれる重要な出来事に関与しました。

• - 681年: 川島皇子やその他の人物と共に「帝紀および上古諸事」の記録の校定事業に命じられ、古代日本の歴史の整理に多大な貢献をしました。

• - 685年: 冠位四十八階の制定に伴い、浄大参に叙せられました。また、686年には大規模な火災が発生しましたが、忍壁皇子の宮殿からの延焼とも推測されています。

持統天皇10年（696年）には、高市皇子の死去により、忍壁皇子が天武天皇の諸皇子の中で最年長となり、皇族の主要な存在感を示しました。しかし、持統天皇からはあまり評価されず、不遇の時代を送りました。彼は藤原不比等の助言を受け、甥である文武天皇の擁立を支持し、ようやく政界に復帰しました。

文武天皇の在位中である700年には、藤原不比等らと共に大宝律令の選定を行い、701年には完成させ、大宝令による位階制導入に際して三品に叙せられています。703年には知太政官事に任命され、太政官の統括者としての役割を持ちました。この際、彼は天武天皇の皇子として特に重んじられる存在でした。

慶雲2年（705年）5月7日、忍壁皇子はその生涯を閉じました。彼の最終官位は知太政官事三品でした。

墓地

忍壁皇子が高松塚古墳の被葬者であるという説も存在しています。

官歴

以下に彼の官歴を示します。

• - 685年: 浄大参に叙せられる。
• - 686年: 加封100戸。
• - 701年: 三品に叙される。
• - 703年: 知太政官事に任命。
• - 704年: 加封200戸。火災被害への補償。
• - 705年: 賜田越前国野100町、5月7日に薨去（知太政官事三品）

系譜

忍壁皇子の父は天武天皇、母は宍人カジ媛娘です。彼には同母の弟妹として磯城皇子、泊瀬部皇女、託基皇女がいます。彼の子女には、息子として山前王、大野王、石田王が、娘には小長谷女王が確認されています。延暦18年（799年）には清滝朝臣姓を与えられた上野王が彼の後裔と考えられています。

このように、忍壁皇子は多彩な業績を残し、古代日本の歴史に多大な影響を与えた重要な皇族でした。彼の活動は、当時の政治や法律、文化の発展に寄与し、今なお多くの研究者に注目され続けています。

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