志和稲荷神社

志和稲荷神社：歴史と信仰が息づく岩手県の霊場

岩手県紫波郡紫波町升沢部落の西部山麓、滝名川左岸に鎮座する志和稲荷神社は、県社から神社本庁別表神社へと昇格した由緒ある神社です。地元では、日本三大稲荷や日本五大稲荷の一つとして広く知られています。近隣には志和古稲荷神社も存在し、地域における稲荷信仰の深さを物語っています。

崇敬を集める神々

志和稲荷神社の祭神は、宇迦之御魂大神（稲荷大神）、猿田彦大神、そして大宮能売大神です。神社では、大宮能売大神を天宇受売命の別名としています。江戸時代には、十一面観音を本地仏として信仰されていたという歴史も持ち合わせています。多様な神々への信仰が、この神社の奥深さを象徴していると言えるでしょう。

創建から現代まで続く歴史

神社の創建は諸説あります。天喜5年（1057年）、源頼義が前九年の役の戦勝祈願のため、京の伏見稲荷神社から分霊を勧請したとの説が有名です。他にも、藤原氏一族の樋爪俊衡による再建説、源頼朝による再建説、大同年間（806年～810年）の創建説、斯波家長による勧請説など、様々な伝承が残されています。

室町時代には斯波郡の郡主である斯波氏から厚く崇敬され、天正16年（1588年）には斯波詮直による社殿造営も行われました。しかし、同年詮直が南部信直に追われると、南部氏が新たな崇敬者となりました。詮直は一時、当神社の別当寺院であった成就院に身を潜め、その後山王海へと逃亡したという逸話も残されています。

南部氏による崇敬は深く、慶長4年（1599年）には南部信直から田畑24石余の寄進があり、その後も継続的に社領の寄進がなされました。祭礼には南部氏当主の直参や代参が頻繁に行われ、南部一族の祈願所としての役割も担っていたと考えられます。天保5年（1834年）には、藩主南部利済が盛岡から神社まで約15キロの参道「志和稲荷街道」を造成するほどでした。

明治初年には村社に列格、大正7年（1918年）には県社に昇格し、戦後は神社本庁に参加、昭和32年（1957年）には別表神社に指定されています。長い歴史の中で、様々な出来事を経てきたことが伺えます。

神仏習合と境内

明治初年までは神仏習合の影響が強く、修験道寺院である成就院が別当として神社を管理していました。境内には、樹齢千年を超える杉の木「稲荷山大杉」があり、神木として崇められています。この杉の根本から白狐の毛を探すという、長寿を願う風習も残されています。

志和稲荷神社は、歴史、信仰、自然が一体となった、まさに霊場と言えるでしょう。多くの参拝者にとって、静寂と祈りの空間を提供し続けています。その歴史と神々への深い信仰は、これからも人々の心に寄り添い続けることでしょう。

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