斯波家長

斯波家長：南北朝を駆け抜けた若き武将

斯波家長は、南北朝時代の動乱期に活躍した武将です。父である斯波高経と共に足利尊氏に仕え、その忠誠心と優れた軍事手腕で、数々の戦で重要な役割を果たしました。

奥州総大将としての活躍

中先代の乱後、足利尊氏が建武の新政に反旗を翻すと、家長は奥州における幕府軍の最前線に立ちました。建武2年（1335年）8月30日、奥州総大将に任じられた家長は、志和郡の高水寺城に入り、北畠顕家率いる陸奥将軍府と対峙します。

しかし、同年12月、顕家が後醍醐天皇の命により南下を開始すると、家長は相馬重胤らを率いて追撃しますが、鎌倉で顕家の進軍を食い止めることはできませんでした。その後、家長は鎌倉に残り、足利尊氏の嫡男・義詮を補佐する関東執事の地位にも就任します。

顕家が上洛している間、家長は軍勢の催促や所領の安堵を行い、また、従弟の兼頼を陸奥に派遣して南朝勢力に対抗させるなど、精力的に活動しました。延元元年/建武3年（1336年）から翌年にかけて、家長の権限は陸奥から甲斐・駿河にまで及んでおり、特に陸奥守として奉書を発給した影響は大きかったと考えられます。この間、家長は奥州を留守にした顕家に代わり、新たな武士たちの保護者として認識され、結果として顕家が築き上げた陸奥将軍府の秩序を切り崩すことに成功したと言えるでしょう。

北条氏残党の討伐と最期

延元元年/建武3年（1336年）3月には、蜂起した北条氏残党を討伐するなど、家長は多方面で活躍しました。同年4月には、豊島河原合戦で足利尊氏を破った北畠顕家が奥州へ帰還する際、片瀬川でこれを妨害しますが、敗北を喫します。

延元2年/建武4年（1337年）12月、北朝を擁立した足利尊氏を討つため、再び大軍を率いて南下してきた顕家を鎌倉で迎え撃ちますが、激戦の末に敗北し、家長は戦死しました。享年17歳という若さでしたが、詮経という子息がいたとされています。

家長の死後、奥州総大将と関東執事の後任には、それぞれ石塔義房と上杉憲顕が派遣されました。これらの役職は、後に奥州管領、関東管領へと発展していきます。また、高水寺斯波氏は家長の後裔を称し、その血筋は後世にまで受け継がれました。

斯波家長は、若くして戦場に散ったものの、その短い生涯の中で、奥州における幕府勢力の確立に大きく貢献しました。その活躍は、南北朝時代の激動を象徴する出来事として、後世に語り継がれています。

参考文献

矢巾町史編纂委員会 編『矢巾町史』 上巻、矢巾町、1985年3月1日。NDLJP:9571486。

外部リンク

『斯波家長』 - コトバンク

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