志太野坡

志田野坡（しだ やば）は、寛文2年（1662年）に越前福井で生まれ、江戸時代前期に活躍した俳諧師です。初めは志多または志田と称していましたが、後に竹田氏を名乗るようになります。野馬、樗木社、樗子、紗方、紗帽、浅生、無名庵高津野々翁、照笛居士など、多くの別号を用いていました。

野坡は、松尾芭蕉の高弟の中でも特に優れた十哲の一人に数えられ、その俳風は「軽み」において他の追随を許さないほどでした。平明で闊達な句作りを特徴とし、軽妙で都会的な人事趣味の句を得意としました。

越後屋の両替店で手代として働いていた頃、其角の教えを受けたことがきっかけで俳諧を始めました。最初に作品が掲載されたのは、貞享4年（1687年）に出版された『続虚栗』です。その後、一時俳諧から離れますが、元禄6年（1693年）に松尾芭蕉から直接指導を受け、元禄7年（1694年）には孤屋・利牛らと共に『すみだはら』を編集・刊行しました。

芭蕉の死後、元禄11年（1698年）から元禄14年（1701年）にかけて商用で長崎に滞在し、越後屋を退職。元禄15年から翌年にかけて、長崎、田代、久留米、日田、博多などを巡る本格的な筑紫行脚を行い、多くの弟子を育成しました。正徳4年（1714年）から正徳5年（1715年）には、森川許六と俳論を交わす書簡の応酬（『許野消息』）を行いました。享保10年（1726年）に浅生庵を新築し、蕉風を上方や九州に広めるために積極的に行脚を続けました。

元文5年（1740年）正月、痰咳が悪化し死去。

代表的な門人には、後継者であり保護者でもあった湖白亭浮雲や、広島地方で活動した多賀庵風律がいます。湖白亭浮雲の妻である諸九尼は、『おくのほそ道』を追体験した紀行文「秋かぜの記」を著しています。

しかし、野坡の「かるみ」は、ともすると卑俗に流れ、軽薄に堕する傾向も見られました。

著作

編著
『すみだはら』
『万句四之富士』
『放生日』
『六行会』など
俳論
『許野消息』
『袖日記』
『俳諧二十一品』
『樗庵草結』
『俳諧秘伝語録』
発句集
『野坡吟草』

関連項目

蕉門十哲
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