志成学校

志成学校（しせいがっこう）

志成学校は、明治時代から大正時代にかけて、米国聖公会によって日本の東京・築地（当時の京橋区明石町）に設立・運営された私立学校です。特に、日本へ留学していた中国人学生を受け入れる目的で開設され、立教大学の姉妹校の一つとして数えられています。

概要と歴史

明治後期、東京には後に中国で影響力を持つことになる約9000人の中国人留学生が滞在していました。彼らの中には、既に中国で学位を取得していた者や、官職に就く資格を持つ者も少なくありませんでしたが、日本語を十分に話せず、また留学生向けの適切な宿泊施設も不足していました。このような環境下で、一部の学生には倫理に反する行いや急進的な思想を抱く傾向が見られ、さらに中国から日本へ亡命していた革命家の影響により、反キリスト教的な考えや外国人排斥の思想に影響されやすい状況でした。

こうした状況は、米国聖公会が中国で宣教活動を行う上での障害となり、さらには将来の中国にとって明確な脅威となりうると、立教学院理事長のジョン・マキムや総理のヘンリー・セントジョージ・タッカーは深く懸念しました。彼らは、これらの中国人留学生を対象とした教育機関を日本に設立する計画を立てます。

この設立計画に対し、米国聖公会伝道局本部は1200ドルの予算割り当てを承認しました。そして1906年（明治39年）4月、京橋区明石町54番地（かつての築地外国人居留地54番）にあった三一会館（建築家ジェームズ・ガーディナー設計、1892年竣工）内に、中国人学生のための私立学校「志成学校」が設立されました。

学校の正式な認可を得るため、1907年（明治40年）2月14日には、タッカーの名前で東京府に学校設置願が提出され、同年3月15日に許可が下りました。設置願に記載された設立目的は、「清国からの男子留学生に普通教育を施すこと」でした。修業年限は3年と定められ、開校当初に設けられた科目は、倫理、日語（日本語）、英語、数学、博物、理化、図画、体操でした。1909年には、ヘンリー・セントジョージ・タッカーが校長に就任しています。

学校の運営状況を見ると、1908年（明治41年）8月には25人の中国人学生が在籍しており、翌1909年（明治42年）8月には、うち3人が洗礼を受けて聖公会の信徒になったことが報告されています。開校当初、東京に駐在する一部の中国側当局者による入学妨害の動きが見られましたが、中国公使館秘書官の子息が入学したことを機に、当局からの認知が進み、生徒数も増加していきました。

学校の教育の質は高く評価されました。タッカーは1910年（明治43年）6月の米国聖公会の機関誌に、志成学校の卒業生が第一高等学校の入試で優れた成績を収めたことを寄稿しています。これは東京の他の中国人学校の間で大きな評判を呼び、結果として、中国公使館の教育担当部署が、今後紹介する学校として志成学校ともう一つの学校だけを挙げたことが報告されています。さらに翌年5月の機関誌では、官立師範学校への入学試験で優秀な成績を称えられた卒業生の事例や、中国人学生のために行っている事業への感謝の声が多く寄せられていることが伝えられています。

学生たちの活動としては、1913年（大正2年）5月7日に、生徒たちが米国が中華民国を承認したことを祝う晩餐会を開催した記録があります。

また当時、同じく米国聖公会が運営する姉妹校である立教大学の予科にも、中国人学生専用のクラスが設けられていました。ここでは、西洋の学術的な知識や一般的な教養に加え、キリスト教の知識を深く理解した中国人を育成し、彼らを将来の中国へと送り出すための教育が行われていました。

志成学校は、設立から約17年後の1923年（大正12年）9月に発生した関東大震災により校舎が倒壊したため、閉校となりました。


脚注の記載は省略します。

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