志方町上冨木

志方町上冨木

志方町上冨木（しかたちょうかみとみき）は、兵庫県加古川市の北西部、特に志方町の南部に位置するエリアです。この地域の郵便番号は675-0314が割り当てられています。行政区画としては、加古川市に編入される以前は志方町の一部であり、さらに遡れば志方村、そしてその前身である上冨木村でした。

地理的特徴

上冨木の地域内には、法華山谷川が流れ、地勢に特徴を与えています。北部には二子池という池があり、この池は法華山谷川と繋がっています。また、峠ノ池という別の池も存在します。地域の景観は大きく分けて、東部と西部に広がる住宅エリアと、その中間に広がる豊かな田園地帯で構成されています。特に東部には、生活を支える様々な商店が点在しています。

周辺地域との境界線は以下のようになっています。

西側：志方町横大路
北側：志方町志方町
東側：志方町投松
南東側：西神吉町宮前
南西側：西神吉町鼎

また、地域の北部には主要な幹線道路である県道65号線が通っており、交通の便に寄与しています。

地名の由来と歴史的背景

「上冨木」という名称は、「下富木村」と対比する形で呼ばれるようになったと伝えられています。また、この地名には古い伝承があります。かつて村の西北の角にあった大歳神社の境内には、非常に大きな松の木が数多く生い茂っており、その松に因んで名付けられたとも言われています。地域には昔から伝わる俚謡として、「富木富木と飛んでは来たがこゝか富木か藪の中」という歌が残されています。

人口について

明治時代後期の村の規模を示す資料として、『兵庫県印南郡統計書 明治35年』（1903年発行）があります。この統計書によれば、当時の上冨木村の世帯数は54戸、人口は322人であったことが記録されています。

地域経済と産業

上冨木は古くから繊維関連の産業が栄えた地域でした。特に、莫大小（メリヤス）製品の製造や、糸の染色業が中心でした。昭和初期には、多くの工場が操業していました。

かつて存在した主な工場

長谷川莫大小工場（1913年6月創業、綿靴下製造）
横山メリヤス工場（1916年4月創業、綿靴下製造）
小原莫大小工場（1923年3月創業、綿靴下製造）
小原メリヤス工場（1924年12月創業、綿靴下製造）
市川染工場（1922年3月創業、綿糸染色）
長谷川染工場（1920年3月創業、綿糸染色）

これらの工場は地域の雇用と経済を支えましたが、時代の変化と共に多くは姿を消しました。しかし、現在も繊維関連の事業を営む企業が存在します。

現在の主な企業

キンキ産業株式会社（1949年創業、ソックス・サポーターの企画・製造・販売を行っています。）
ユニバル株式会社（主にアウトドア用やスポーツ用のソックスを手がけています。）

地域ゆかりの著名人

上冨木は、近代において重要な役割を果たした人物を輩出しています。

平岡萬次郎: 弁護士であり、衆議院議員も務めました。彼は上富木の「横山」という地区の出身で、地元の有力者であった農業・金融業者の平岡太吉の長男です。
* 平岡定太郎: 内務官僚として活躍し、樺太庁長官や福島県知事などの要職を歴任しました。平岡萬次郎の弟にあたり、日本の近代文学史に名を刻む作家、三島由紀夫（本名：平岡公威）の祖父としても知られています。

このように、志方町上冨木は、歴史的な名称の由来や古い俚謡、かつて栄えた繊維産業、そして著名な人物の出身地として、加古川市内で独特の歴史と文化を持つ地域と言えます。

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