志波城

志波城について

志波城（しわじょう/しわのき）は、現在の岩手県盛岡市に位置する古代の城柵で、国の史跡に指定されています。この城は、盛岡市によって「志波城古代公園」として整備され、外郭南門や築地塀、政庁の門、官衙建物などが復元されており、その歴史的な姿を今に伝えています。

歴史と沿革

志波城は、平安時代初期、征夷大将軍・坂上田村麻呂が蝦夷の首長アテルイを降伏させた翌年、延暦22年（803年）に築かれました。北上川と雫石川の合流地点近くに位置し、朝廷が律令制支配を北上川北部まで及ぼす上で重要な拠点となりました。当時、陸奥国最北の城柵であり、その規模は最大級でした。築城当初は鎮守府が置かれた可能性も指摘されていますが、その後、胆沢城へ移転しました。志波城は、朝廷による文武支配の最前線基地としての役割を担っていました。

城の構造と規模

志波城は、外郭が840m四方の築地塀と928m四方の土塁で二重に区画されています。外郭築地塀の南辺中央には外郭南門があり、築地塀には約60m間隔で櫓が設置されています。郭内の中央やや南寄りには、150m四方を築地塀で囲まれた政庁があり、正殿や東西脇殿など14棟の掘立柱建物跡が配置されています。また、官衙域や兵舎、工房としての機能を持つ竪穴建物群が1,200～2,000棟ほど存在していました。外郭南門から政庁南門へは、幅約18mの南大路が繋がっていました。郭内北部には小河川を取り込む構造があり、物資運搬のための運河として使用された可能性もあります。

徳丹城への機能移転

志波城は、雫石川の氾濫による水害で北辺部分を失い、その機能を南に下った場所にある徳丹城に移転しました。志波城はその役割を約10年で終えることになりました。現在でも、志波城の北辺部には水害の影響で形成された段差が残っています。

発掘調査と史跡の復元

1976年から1977年にかけて、東北自動車道建設に伴う発掘調査で、築地塀や大溝、竪穴建物跡が発見されました。その後の調査により、1984年に「志波城跡」として国の史跡に指定されました。志波城の所在地は長らく不明でしたが、太田の「方八丁」という地名が、八町四方の外郭を持つ城郭の姿と一致したため、有力な根拠となりました。1991年からは盛岡市によって外郭南門と築地塀が復元され、「志波城古代公園」として一般公開されています。現在では、外郭南辺のほか、政庁官衙域も復元整備されており、復元された官衙建物は展示室として活用されています。

志波の地名の由来

志波城が古代「志波郡」の名を冠しているのは、造営当時まだ「岩手郡」が建郡されていなかったためです。「奥六郡」は、当初は磐井郡から志波郡までを指しましたが、後に磐井郡が国府多賀城の直接管理下に入ると、新たに岩手郡を含めた六郡となりました。この地域は、俘囚長・安倍氏によって治められました。「志波」「斯波」「紫波」の表記は、いずれも古代郡名に由来しますが、当該城跡を指す場合は、『日本紀略』の表記である「志波」が定着しています。「斯波」は中世の斯波氏に、「紫波」は現在の紫波郡に関連して使用されるのが一般的です。「志和」は岩手県紫波郡紫波町上平沢・水分周辺の通称として用いられ、南部八戸藩の飛び地であったことに由来すると考えられています。また、日本最北の延喜式内社である志賀理和気神社に由来するという説もあり、当時としては朝廷の支配力が及ぶ最も遠方の地域を示していたと考えられています。

参考資料

児玉幸多、坪井清足『日本城郭大系 第2巻 青森・岩手・秋田』新人物往来社、1980年7月15日。

関連項目

日本の古代東北経営
日本の城一覧
北海道・東北地方の史跡一覧
城柵

外部リンク

（[盛岡市]]）[国史跡志波城跡・志波城古代公園
岩手県庁
（[岩手県]]庁）[いわての文化情報大辞典
（[岩手県]]庁）[いわての城・館 エミシの時代 志波城
志波城まつり

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