日本城郭大系

日本城郭大系：日本の城郭を網羅した歴史的文献

『日本城郭大系』は、1980年に新人物往来社から刊行された、日本の城郭に関する大規模な研究書です。児玉幸多氏と坪井清足氏という城郭研究の第一人者が監修を務め、平井聖氏、村井益男氏、村田修三氏らが編集に携わりました。全18巻と別巻2冊、計20巻から成り、それぞれの巻には地域ごとの城郭情報が詳細に記されています。さらに、各巻には最新の研究成果に基づいた詳細な解説と図版が掲載され、城郭研究のバイブルとして高く評価されています。

網羅性と体系性：本書の最大の特徴は、その網羅性と体系性です。北海道から沖縄まで、日本全国の城郭、砦、そして居館を網羅的に扱っている点が大きな特徴です。各巻は地理的な単位、主に県単位で編纂されているため、特定の地域の城郭を効率的に調べることができます。各城郭の構造、歴史、周辺環境に関する情報を、複数の城郭研究者や歴史家が執筆した、まさに集大成と言える内容となっています。

絶版となった歴史的価値：現在では絶版となっているため、入手困難な希少な文献となっています。しかしながら、その内容は現在でも色褪せることなく、城郭研究において極めて重要な位置を占めています。近年の発掘調査や新たな史料の発掘などにより、個々の城郭や地域史に関する研究は進展を見せていますが、『日本城郭大系』が体系的に日本の城郭情報を集成した書籍として、その後の研究に多大な影響を与えたことは間違いありません。

各巻の内容と構成：

各巻は、それぞれの地域を専門とする研究者によって執筆されており、高い専門性と信頼性を誇ります。巻構成は以下の通りです。

第1巻：北海道・沖縄
第2巻：青森・岩手・秋田
第3巻：山形・宮城・福島
第4巻：茨城・栃木・群馬
第5巻：埼玉・東京
第6巻：千葉・神奈川
第7巻：新潟・富山・石川
第8巻：長野・山梨
第9巻：静岡・愛知・岐阜
第10巻：三重・奈良・和歌山
第11巻：京都・滋賀・福井
第12巻：大阪・兵庫
第13巻：広島・岡山
第14巻：鳥取・島根・山口
第15巻：香川・徳島・高知
第16巻：大分・宮崎・愛媛
第17巻：長崎・佐賀
第18巻：福岡・熊本・鹿児島
別巻1：城郭研究入門
別巻2：城郭研究便覧

別巻には、城郭研究の入門書的な役割を果たす「城郭研究入門」と、より実践的な研究手法を解説した「城郭研究便覧」が含まれ、城郭研究を始める人にも役立つ内容となっています。

現代における意義：

『日本城郭大系』は、単なる城郭の情報集ではありません。日本の城郭に関する膨大な情報を体系的に整理し、その歴史的、文化的価値を明らかにした、歴史に残る偉業と言えるでしょう。現在でも、その内容は城郭研究者や歴史家、そして城郭に興味を持つ多くの人々に参照され、高く評価されています。絶版となっていることが残念ではありますが、デジタルアーカイブ化などの取り組みによって、その貴重な情報が未来永劫に保存・活用されることを願っています。本書は、城郭研究の出発点として、そして日本の歴史文化を深く理解するための重要な一助となるでしょう。

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